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地域後見推進プロジェクト

共同研究
東京大学教育学研究科生涯学習論研究室+地域後見推進センター

成年後見と不動産業者

(1) 高齢化の進展と認知症高齢者等の増加

現在、日本では急速な高齢化の進展により、判断能力が不十分な人が大幅に増え続けています。近時、認知症高齢者がおよそ600万人強、精神・知的障がい者がおよそ500万人弱ほどいると推計されており、今後その数はますます増加していくと見込まれています。

 

(2) 不動産業界への深刻な影響

判断能力が不十分な人の増加は、不動産取引の停滞、空き家の増大、不動産市場の縮小など、不動産業界に深刻な影響を与えています。
判断能力が不十分な人は、不動産に係る契約等を行うことは困難です。これらの人の保有不動産は、市場で適切に取引できないために、不動産の円滑な取引や流通を阻害する要因になります。現在の高齢者世帯の保有不動産額から推計すると、全国で実におよそ74兆円もの不動産が滞留してしまう可能性があります。

 

(3) 成年後見制度の活用の重要性

このような状況に対処するために有効な方策と考えられるのが、成年後見制度の活用です。家庭裁判所によって選任された成年後見人は、認知症高齢者等の代理人として、その不動産に関する契約の締結等を行うことができます。
後見制度を用いることで、滞留しがちであった判断能力が不十分な人の不動産をより円滑に取引することが可能となります。また、悪質商法や詐欺などの不当な取引の防止、および不動産の取引や管理等の適正化などを図ることもできます。

 

(4) 後見制度の理解を通じた不動産取引の適正化と円滑化

認知症高齢者等は意思能力が不十分なため、不動産に関する契約を締結することは困難です。契約を成立させるためには後見制度を利用する必要がありますが、後見制度の利用者との取引には一定のリスクを伴います。
例えば、成年被後見人と取引した場合、後で契約を取り消されてしまう可能性がありますし、また家庭裁判所の許可なく居住用不動産を処分した場合、その契約は無効になります。後見制度を十分理解しないまま安易に取引した場合、大きなトラブルや損失が生じてしまう可能性があるのです。
上記のようなリスクの理解を含めて、多くの業者は判断能力が不十分な人との取引のノウハウを持っておらず、それゆえ、そういった案件を敬遠する傾向が強いように見受けられます。ですが、後見制度に関する十分な知識を習得すれば、そのようなリスクを回避して適切な取引を行うことが可能となります。
上記のような観点から、住宅・不動産事業者は後見制度を理解しておくことが望ましいといえます。そのことにより、判断能力が不十分な人に係る不動産取引が適正化し、ひいては不動産流通全体の円滑化・活性化にもつながっていくものと期待されます。

 

(5) 後見制度の学習のための資格制度

上記のような状況を鑑み、当プロジェクト(東京大学教育学研究科生涯学習論研究室 コミュニティ意思決定支援プロジェクト)と全国住宅産業協会は、共同研究の一環として「不動産後見アドバイザ」資格制度を創設しました。
本資格は、後見制度と住宅・不動産の取引・管理等に関する知識向上・人材育成を目的とした独自の資格であり、毎年、講習会を開催しております。これまで、不動産業者をはじめとした様々な方々に講習会で学んでいただき、本資格を取得していただいています。

なお、本資格の講習会の主な講義科目としては下記の通りです。

・法定後見制度の基礎
・任意後見制度の基礎
・要配慮者(認知症高齢者、知的・精神障がい者等)の理解
・要配慮者に関する法制度(介護保険法、障害者総合支援法等)
・建築関連法規の解説
・要配慮者との不動産取引に関する実務
・相続と遺言
・信託とファイナンス