menu_open menu_close project external arrow_right arrow_up mail course home login sitemap topics about arrow1

地域後見推進プロジェクト

共同研究
東京大学教育学研究科生涯学習論研究室+地域後見推進センター

1.ご挨拶

支えあいの社会のために

牧野先生b
東京大学大学院教育学研究科 教授
牧野 篤

 少子高齢・人口減少という社会構造の未曾有の変化に直面して、私たちの生活する社会は立ちすくんでいるかのように見えます。しかしそれは、私たちが、拡大し、再生産する社会しか知らないことによるようにも思われます。
 その社会では、人々の間の関係を切断し、市場に切り換えることが、利便性を高め、人々の自由度を高めることだと考えられてきました。しかし、そのことが結果的に、生きづらい、不自由な社会をつくってきてしまったのではないでしょうか。

 私たちは、このような社会に疑問を抱き、また現実問題としての財政危機を見据えて、人々の間に新たな支えあいの文化を創り出すために、コミュニティ意志決定プロジェクトを立ち上げ、市民後見をその中心に位置づけて実践を続けてきました。
 超高齢社会とは、高齢者だけの社会ではありません。そこには、高齢者の他、子どもも青年も成人も、そして男性も女性も皆がともに暮らしています。そしてこの社会で今問い返されているのは、これまでの過剰な福祉や医療が、人々の尊厳を傷つけ、結果的に生きる意欲を殺いでしまったのではないかということでした。

 今求められているのは、人々が互いに寄り添いながら、支えあい、互いの意思を尊重して、協調しつつ生きていくことです。それが人々の間に、互いに認めあい、相手の意思を尊重する文化をつくりだし、結果的に、自由が最大限尊重される社会をつくりだします。
 このような新しい社会は、規模の拡大と再生産を価値とするのではなく、むしろ多様な価値が様々な姿をまとって実現していく豊穣性に満ちた社会であり、そこでは人々が支えあうことで、自分の希望を実現できる幸せな社会が生まれていくものと信じています。

 今年の春、成年後見制度利用促進法が成立、施行されました。そこでは、成年後見の担い手として市民を育成し、報酬の支払いなどの支援を拡充することが法律上の基本方針として規定されています。国そのものが、市民後見人を新しい社会の担い手として位置づけたのだといってよいでしょう。

 私たちは、市民後見人とは、意志決定に困難のある人を支援するのみならず、人々が互いに支えあい、希望を実現する自由を手にすることのできる社会を、コミュニティレベルでつくりだす新しい専門職なのだと考えています。
 この専門職の養成のために、東京大学では過去7年間にわたって市民後見研究実証プロジェクト等を行い、市民後見人養成講座を開催して、約3000名の修了生を輩出することができました。その後、市民後見人の養成をより社会に広めるために、1年間の準備期間を経て、今年度、新たに一般社団法人地域後見推進センターとして自立を果たしました。
 今後は、この地域後見推進センターが中心となって、私どもの研究室と共同研究を組んで、市民後見人養成講座を実施していくことになります。実施主体は地域後見推進センター、そしてそれを研究的に支えるのが私どもの研究室という関係になります。

 新たな支えあいの文化を生み出すことで、希望の高齢社会をつくりだすためにも、地域後見推進センターの果たすべき役割には大きなものがあります。市民の皆さんのご支援をお願いしたく存じます。


北野先生b
一般社団法人地域後見推進センター 理事長
弁護士
北野 俊光

 私たち「地域後見推進センター」は、後見人を必要とする本人の目線で、本人の権利を擁護する市民後見人の活動の重要性を認識し、国、地方公共団体、家庭裁判所、専門職諸団体などと連携し、各地域の後見実施機関、後見関連の市民団体等の成年後見事業等を支援するとともに、市民後見人の養成や地域の後見人のサポートなど、各種後見関連活動を実施する目的のもとに設立された非営利の団体です。
 これからの超高齢社会を、地域の人々が共に支え合い安心して暮らすことができる共生社会とすべく、市民後見を新たにコミュニティー後見と位置づける東京大学大学院教育学研究科生涯学習論研究室(牧野研究室)が行うコミュニティ意思決定支援プロジェクトと協同し、同研究室と共同研究の形で市民後見人養成講座を引き続き開催いたします。

 折しも、2016年4月8日成年後見制度利用促進法が成立し、同年5月13日に施行されました。
 この法律は、成年後見制度を共生社会の実現に資する重要な手段であるとした上で、その利用促進に関する施策を総合的に策定し、これを実施することを国の責務とし、その地域の特性に応じた施策を実施することを地方公共団体の責務としました。国は、内閣府に内閣総理大臣を長とする成年後見制度利用促進会議を設置し、有識者からなる成年後見制度利用促進委員会を設置します。
 やがて、いくつかの基本方針が具体的に策定されることになりますが、特筆すべきは、成年後見制度に関する地域住民の需要に的確に対応するために、市民の中から成年後見人等の候補者を育成して人材を確保し活用を図ること、報酬の支払いの助成その他の支援を充実させることが法律上の基本方針として明確に規定されたことです。

 私たちは、成年後見制度利用促進法の趣旨に賛同し、コミュニティー後見を社会に根付かせるため、地域において信頼され実務能力にすぐれた市民後見人を養成し、活動されている後見人の方々に対し、専門的な助言・指導および各種の支援を行います。
 また、地域の自治体、後見実施機関等に対する助言・相談対応、講師派遣などを行い、成年後見事業等に取り組む市民団体等に情報提供や助言を行うこと、および成年後見制度の可能性を拡げる民事信託等に関する調査研究を行うことなどに力を尽くしたいと考えています。