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地域後見推進プロジェクト

共同研究
東京大学教育学研究科生涯学習論研究室+地域後見推進センター

トピックス.

修了生代表スピーチ(令和5年度市民後見人養成講座 修了証書授与式)

 修了生代表スピーチ
 山崎 確美 様

 

 私が成年後見制度を知ったのは、終活の勉強をしている時でした。父がなくなって手続きをしていた時にふと思いました。この手続き、独身の私が死んだときは誰がやるのだろうと。その時のために準備をしておかないといけないと思って調べているときに、成年後見制度のことを知ったのですが、その時は、親族後見以外には専門職後見しかいないと思っていました。その後、市民後見というものがあると知り、これなら自分にもできるかもしれないと思って今回の講座に参加させていただきました。

 これからどのように活動していくのかは具体的には決まっていません。ただ、私は人が好きなようです。人のために何かをしてあげたくなってしまう面倒見のいいところが長所であり、裏を返せば余計なお世話という短所でもあると思うのですが、これくらいが市民後見人としてはちょうどいいのかなぁと思ったりもします。

 後見実務演習で後見開始の申立書を作成した際に、課題で出てきた江森富子(えもりとみこ)さんのことを考えました。
 20代で結婚して2人の子供に恵まれ、子育てがひと段落したころにもう一度仕事を始めておそらく定年近くまでお仕事をされていて、ごくごく普通に幸せな家庭をもっていたんだろうなぁ、とか。
 旦那さんが比較的早く亡くなってしまったのは残念だけど、その後85歳までひとり暮らしをしているなんて、立派だなぁ、とか。
 それにしても、長男の孝雄さんは50歳にもなって親にお金の無心に来るなんて何とかならないのかな。
 長女・麻理さんがお母さんである富子さんに意見をするのもすごくわかる!
 それでも富子さんは、子供がかわいくて何とかしたくなっちゃうんだろうなぁ。
 富子さんだけでなく、この3人の家族が上手くいくためには、富子さんにどんな支援をしてあげるのが一番いいのかなぁ。
 なんて考えることが、大変ではあったのですが、とても楽しい時間でした。

 また毎回の講義は、様々な立場で後見制度に関わっている方たちのお話を聞くことができるとても贅沢な時間でした。その中には現場で関わっているからこそのお話、被後見人の方の様子、実際のお仕事の中で苦労されたことなどという生のお話が多く含まれていました。正直に言って、講義の中で頭に残っていることはテキストに書かれていることではなく、このような生のお話だったように思います。ただ、そういうお話こそが、これから後見人として活動していく際のヒントになるのだろうと思っています。
 講師の皆様には、貴重なお話を聞かせていただき、とても感謝しています。

 最後になりますが、毎回の講義で教室に行くと、事務局の方々がとても明るくフランクに出迎えてくださり、5カ月間、気持ちよく通うことができました。また、課題を進めるうえで、何度かメールで質問をさせていただきましたが、毎回、とても素早く的確に返信いただき、助かりました。ありがとうございました。

 そして、今回、一緒に受講し、今日、一緒に修了された皆様。後見人として活動される方やご自身のお仕事の中で活かしていく方、また、ご自身の身内のために講座の中で身につけられたことを活用される方、さまざまな方がいらっしゃると思いますが、それぞれの立場で活躍されることをお祈りしています。

 


 修了生代表スピーチ
 山田 晶子 様

 

 本日は、修了生代表の一人として出席させていただき、またこのような場でお話しする機会をいただきまして、誠にありがとうございます。半年間、ご講義くださいました講師の先生方及び、事務局の皆様に、改めまして御礼を申し上げます。

 私はこちら東京大学のあります文京区社会福祉協議会の権利擁護センターにて地域福祉権利擁護事業や、成年後見制度の普及啓発に携わる係にて働いております。

 地域において権利擁護の輪が広がるためにできることや、自ら成年後見に携わる業務を行う上での課題について意識をしながら受講させていただきました。オンラインにて受講をさせていただき、画面に映る皆様の背中を見て私も頑張ろう、と気持ちを奮い起こしておりました。こうした貴重な学びの場を設けてくださった皆様、改めて本当にありがとうございました。

 本日は、本講座で学んだ数多くのことの中で2点、お話をさせていただければと思います。

 一点目は市民後見人の責任の大きさとその仕事の重要性です。その業務は単に法的な手続きだけでなく、一人の人間と深く接し、重要な意思決定の場面に立ち合い、本人の意思を尊重しながら後見業務を行うこと。大変責任が重く、またやりがいのある仕事だと再認識しました。特に申立て書類を作成する課題では、悪戯に代理権を付与するのではなく、本人の生活におけるご希望や、支援があれば自ら実施可能なこと、長期的な見通しを総合的にアセスメントし、後見人の権限の内容を検討することなど、これまで十分意識できなかった数多くのことを学びました。

 二点目は、本人及び関係機関を知ろうとする想いの重要性です。受講生の皆様と画面上でディスカッションをする中で、皆様ご家族のこと、取り組まれているお仕事のことなど様々な背景から本講座をご受講されており、その根底には「相手のことを深く知りたい」という気持ちがあることを強く感じました。私も皆様のように、これまで接してきた利用者さんの理解をさらに深めたいと思うと同時に、「誰かを理解して支えたい」と感じておられる市民の方々のことも、より理解を深めたいと感じる契機となりました。

 また、本人を理解するためには、本人に関わる様々な支援者のことも理解することが重要であると感じました。わたしは選択課題のレポートにて、関係機関の連携の課題と対応策をテーマにさせていただきました。その中で、本人を支援する関係機関相互の理解や連携が不足していると、本人の意思実現が不可能になってしまうこと、支援者の側から本人の意思実現の妨げになってしまってはいけないということを自らの戒めの意味も含めて強く感じました。

 そして、社協という地域福祉の推進の立場から連携の課題に取り組むことは本人のために大変重要であることを痛感しました。関係機関相互の日頃のコミュニケーションの場作りや勉強会、お互いを知る場の提供、それらの取り組みがひいては本人の意思の実現につながるのだと感じました。

 今後、わたしは権利擁護センターとして、微力ながら広く権利擁護の担い手の輪が広がるための仕組みづくりに貢献したいと、本講座を通じて改めて感じました。

 本人も、また担い手も、孤立することのない地域社会の在り方について、ここでこうして共に学ばせていただいた皆様方との繋がりを大切にしながら、今後も検討できますよう精進してまいりたいと思います。

 本日は誠にありがとうございました。

 


 修了生代表スピーチ
 髙橋 明弘 様

 

 令和5年度市民後見人養成講座修了生を代表して、あいさつを申し上げます。

1、市民後見人養成講座の開講概要

(1)市民後見人養成講座は、東京大学本郷校舎において、令和5年10月21日(土)から対面式およびオンラインZOOM使用のハイブリッド形式によって講義が開始され、令和6年2月4日(日)を最終講義日として、10回にわたり行われました。開講講座は、33講座であり、授業は、45時間に及ぶものでした。これは、一般の国公立・私立大学の各学部において、1科目あたり前期・後期(合計30回)にわたって行われる授業時間に相当します。

(2)受講生は、10回の授業日において、天候不順もあって快晴、うす曇り、ほん曇り、小雨、本降り、みぞれ、あられ、大雪など、ほとんどの空模様を短期間のうちに体験することになりました。

(3)使用テキストは、A4版で470頁、使用レジュメ集(1~3の合計)は、A4版で677頁であり、合計1147頁、厚さ5cmにおよびました。重量はかなりのものがあり、一般市販されているテキスト版に換算すると、1,500頁ほどで5冊から6冊分に相当するものでした。天候不順のなか持参して受講することはたいへんでしたし、約100日間で履修することはとても困難でしたが、受講生の熱意と努力が上回り、事務局の配慮によって克服しました。

2、講義の概要(枠組み)

(1)講義は、市民後見人養成講座開講の目的および講座の最終目標を説明することから始まり、早速、後見制度に関係する開講専門科目の解説が、各科目の専門講師によって、パワーポイントや動画を使用して、実施されました。

(2)開講科目の内容を専門性により分類すると、①法律、②現在の福祉制度の理念、③関連担当機関の設置目的・その働きと連携、④医学・医療の現状、⑤心理学、⑥税務、⑦地域現場で直面する諸状況についてということになります。専門の各科目で示された個別課題を起点とし、市民後見人養成という目標に向けて線で結ぶと、後見において必要とされる法制度・地域社会におけるシステム・制度設計というプラットホームが形成される。本講座で使用したテキストおよび専門講師の解説は、この過程を示したものでした。

(3)講座の先にある到達課題は、提供されたプラットホームを所与として、後見制度を必要とする人々の地域後見社会・住環境をどのように整備・構築し利用するかということでした。

3、平面的なプラットホームを立体的に連携化することによる制度の利用

(1)後見制度の改正と地域社会・住環境の整備・構築について
 後見制度は、個人(とは「被後見人、被保佐人及び被補助人」をいう)の意思を尊重し、その実現に向けて、身上保護および財産の維持管理を実施することにあります。なかでも法定成年後見制度は、民法の改正によって、近年中には、現在の継続的な制度としてだけでなく、特定案件について期間限定による利用を可能とする制度として再構築することが表明されており、これに呼応した後見制度やあらゆる機関の関連制度(施設およびシステム)の設計が、市区町村において進められてきています(文京区では中間試案公表から最終試案の提出段階)。

(2)地域後見社会・住環境の整備・構築に対応するためのプラットホームの立体化と連携利用
 地域後見社会および住環境の整備・構築は、前記プラットホームを所与として、現在進行形の少子化、働く世代の確保、民族的多様性への対応、ディジタル社会への対応および制限を適切に行うことで実現への一歩となると考えられています。
 これらの諸要素を組み込んだあらゆる機関の制度及びシステムを縦線・横線・斜めの線で結び重層的に連携させ得る体制(立体的なプラットホーム)を整備・構築すること、そして後見制度を適用すれば後見人による知見・手続き努力により、必要な時には、誰もが、いつでも、どこでも、プラットホームを多角的に利用して「個人の意思」を実現し得るという過程の設計と実施が急がれています。
 したがって、市民後見人は、法制度を十分に理解し、法定後見および任意後見の各制度そして重層的に結びいた既存の関連制度・システム(立体的なプラットホーム)を多角的に利用しつつ、自由な決定による「個人の意思」を実現するため、努力しなければなりません。市民後見人の責務は誠に重大ということになりましょうし、その向上心とたゆまぬ努力が求められましょう。

4、まとめ

(1)専門科目を担当された講師の皆さんによる作成テキストおよび講義の内容は、担当者独自の特色ある講義方法により、最後まで「あきさせない」内容であったと思います。講師の皆さんに感謝申し上げたいと思います。理解度試験の問題内容は、制限時間を1時間としては、難しいと感じました。

(2)講座事務局による講座内容の計画・立案・準備・会場設定・後片付け、そして臨機応変な対応は適切なものと感じ、感謝申し上げたいと思います。

(3)受講生は、仕事・生活・子育て・高齢者の対応・地域社会での役割などを担当しながらの受講で、たいへんな努力を要するものと感じ、敬意を表します。

(4)講座を受講する際に、こころよく受講を可としてくれて、協力していただいた家族や職場の同僚の皆さんに感謝申し上げたいと思います。

5、新年度と法改正に向けて

 約5か月間にわたって、市民後見人養成講座を皆さんと受講できたことに感謝申し上げるとともに、法改正の際には、また、東京大学のこの講座のフォローアップ研修において再会することを期待しています。
 1週間を経過すると、令和6年度が始まります。新年度の4月1日は、月曜日です。休息をとり、そして十分な準備をして、新年度・新学期にご活躍ください。

 ありがとうございました。

 


令和6年3月23日(土)
令和5年度市民後見人養成講座
修了証書授与式