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地域後見推進プロジェクト

共同研究
東京大学教育学研究科生涯学習論研究室+地域後見推進センター

講師への質問と回答

 

Index

1. 日本の高齢社会Ⅰ: 牧野篤
2. 法定後見制度 Ⅰ・Ⅱ: 髙村浩
3. 市民後見概論: 小佐波幹雄、佐々木優(品川成年後見センター)

 

日本の高齢社会Ⅰ(高齢社会の理念・あり方)
 牧野篤(東大教授)

質問1

質問 回答

ご講義ありがとうございました。いくつか質問及び確認したい点がありますので宜しく願い致します。

1.テキストのスライドP49

 既に老人福祉施設に入所されている場合及び私の母のように胃ろうによる栄養補給となっている場合は食事を「誰と」「どのように」という事象は困難と考えますが、何か良い方法はありますか。

2.テキストのスライドP49~50の間の先生のスライド

 中山ちなみ先生の文が、1988年、P105,106とありました。紀要か何かだと思います。

①正式な論文はありますか。京都社会学年報の2頁程度ですと論文と判断できないと存じます。

②1998年と古いことからここ5年以内の論文はございますか。近年の社会情勢から20年以上前の書類を引用されてもその「確からしさ」「有効性」がどのように、現在において測定されたのか不明です。ご教示ください。

3.テキストのスライド94頁以降の先生のスライド

①「学び続ける力が必要」ということにおいて今までの考えで対応してきた60代以降の市民にとって新しいパラダイムを創造していくことは相当の負担が掛かると考えます。今を生きるために必要条件ということは理解できます。しかし、実際のところ、中程度認知症以上の方及び気力が低下している方にはどのように接して行けばよいのでしょうか。

②先生は、「勉強するということではなく”相互の関係を作りつつ配慮しながら”やりたいと思うことを一緒に・・・」と言われていらっしゃいます。これは、介護保険法等に出てくる「合理的配慮」と理解すればよいのでしょうか。

 以上5点宜しく願い致します。

牧野です。ご質問、いただきました。ありがとうございます。

以下、私からの応答です。

1.いただいたご質問はすべて、「承認関係と肯定」の重要性を述べたセクションとかかわっていると思います。

 そこで取り上げた事例は、評価することや賞賛することの重要性ではなくて、承認し受け入れる関係をつくることの重要性をいわんがためのものです。

 ですので、ご質問の1、3については、そのような関係をつくることの重要性をどう実践へと展開するのかという観点でご理解いただければと思います。その場合、食事も一つの事例ではありますが、そこでいわれていることは、誤嚥が少ない人たちは、食事をおいしいと思っているが、それは人間関係によって規定されている面が大きいのではないか、という提起ですので、食事という場面に限れば、食事のとり方が重要だが、それだけではない、ということにもなります。

 たとえば、今回の講義では例示しませんでしたが、
Holt-Lunstad, J., Smith, T. B., Layton, J. B., ‘Social Relationship and Mortality Risk: A Meta-analytic Review’, PLoS Medicine, Vol. 7, July 2010, p.14 Angelique Chan, ‘Aging and Social Policy in East and Southeast Asia’, (東アジアと東南アジアにおける老化と社会政策)、東京大学高齢社会総合研究機構『国際シンポジウム2014「活力ある超高齢社会へのロードマップ-2030/2060」報告書』、2014年3月、などにも人間関係の重要性が指摘されています。
 このような文脈でご理解いただければと思います。

2.このような応答では、回答になっていないとお感じになるかも知れませんが、講義で事例を取り上げた趣旨は上記のとおりですので、この点を考慮しながら、それぞれの現場実践での対応をお考えいただければと思います。

 また、私自身は実践家ではありませんので、個別具体的な事に対しては、発言を慎みたいと考えています。責任を取れないということ以上に、そのような発言をすることは専門家(といえればの話ですが)の思い上がりだとの思いがあります。

3.中山ちなみさんの文献についての記述ですが、ご指摘、ありがとうございます。頁数は、もともとスライドには中山さんの論文から引用した図が貼り付けられていて、そのための注記だったのですが、図を削除したときに、頁数を消去し忘れて、残ったままになっていました。失礼しました。『京都社会学年報』第6巻(1998年)掲載の論文です。

 この論文を取り上げたのは、すでに1990年代から同様の指摘があったということを示すことが大きな目的です。ここでも、1.と同じように承認関係の重要性を示すために、この論文を取り上げています。

 その後も、移住ではありませんが、移動にかかわるものとしては、新谷周平「ストリートダンスからフリーターへ:進路選択のプロセスと下位文化の影響力」『教育社会学研究』第71集(2002年)など、同様の傾向が若者にあることを指摘しています。(これも古いといわれそうですが・・・・)

4.私が「お勉強ではなくて、寄り添い、共に行うこと」を「学び」だとお話ししたことは、上記の点とかかわります。「学び」を知識を分配され、所有することと考えると、社会は分配論と私有論の議論となってしまい、どう分けて所有するのか、が課題となってしまいます。そうではなくて、共にかかわり、認め合い、受け入れ合い、つくり出すことで、社会を共に生きる関係へと組み換え続けること、そうすることで、他者がいるからこそ自分が常に変化していくことをうれしく思う、そういうことが「学び」のプロセスなのではないか、ということです。その基本となるのは、承認(さらには意志決定の支援)なのではないかと思います。「学び続ける力」というのは、この意味においてであることをご理解いただければ幸いです。

 介護保険法等における「合理的配慮」については、私自身は「合理的」という字句に何となく違和感を感じますが、あくまでも本人の意志を尊重するという意味であれば、その通りだと思います。ただ、その意思を尊重する関係の前にあるものとして、承認関係が問われているのではないかとも思います。

 いただいた質問に対しては、以上のようにお応えしたいと思います。

 よろしくお願いいたします。

 

 

法定後見制度 Ⅰ・Ⅱ
 髙村浩(弁護士)

質問1

質問 回答

財産目録作成のための財産調査に関して質問致します。

具体的な財産調査方法としては聞き取り、郵便物の確認だと思いますが近年は金融資産も通帳不発行でインタ-ネット上での取引を利用する方が多いと思います。また、仮想通貨やPaypayなどアプリを使っている場合など従来の調査方法では資産を確認できないと思います。

PCの使用にはパスワ-ドが設定されていることが想定されますので赤の他人であった市民後見人がどこまで個人情報の開示要求できるのでしょうか?また、調査できずに財産管理できなかった場合でも責任は免責されるのでしょうか?よろしくお願い致します。

 市民後見人であっても、成年後見人として、金融機関その他の事業者に対し、取引に係る記録又は残高に係る記録の開示請求をすることができます(個人情報の保護に関する法律第32条3項、同法施行令第11条1号。ただし、令和4年4月1日からは、同法第37条3項に条名変更)。

 例えば、本人の財産である債権の存在に気が付かずにそれを時効で消滅させたような場合に、成年後見人としての善管注意義務(民法第852条・第644条)に違反したという理由で損害賠償責任を問われないようにするためには、成年後見人として一般的に要求される注意をもって財産の調査を尽くすことが必要です。「自己のためにするのと同一の注意」(同法第827条)では不十分です。善管注意義務の内容は、具体的な状況によるため一概には言えませんが、記憶又は口頭による説明に頼らずに、客観的な記録を確認し、それを保存する等の注意が必要と考えられます。

質問2

質問 回答

 P83に療養看護という表現が出てくるのですが、民法と保助看法でいう看護との違いはどこでしょうか?

P88の身体抑制に関する法令は指定介護老人福祉施設に関するものですが、病院であっても身体抑制をする場合があります。病院の場合はどういった法令?がありますか?後見人が身体抑制にかかる同意書に、説明を受けたという意味でサインをして問題になることはないのでしょうか?身体抑制=虐待に近いので心配なところです。また、そもそも身体拘束は一身専属的行為には入らないと考えてよいでしょうか?

P90の医療契約の締結は、入院診療計画書が契約書にあたるのではないでしょうか?法的にはあたらないものなのでしょうか?また、治療や検査の同意書は一つ一つの治療行為の同意であって医療契約とはまた違う性質のものという理解であっていますか?

たくさんをすみません。ありがとうございます。

〇民法第858条の療養「看護」と保健師助産師看護師法(保助看法)の「看護」との関係

 民法第858条の「療養看護」は、保助看法の「看護」とは異なります。なお、厚生労働省関係の法令又は通知は、同省のウェブサイトで検索可能です。

同条の「療養看護」に関する事務は、同条の他の事務と明確に線引きをすることは困難ですが、強いて言えば、その文言から考えて、健康に関する事務という広い意味に理解できます。

 これに対して、保助看法の第5条は、「看護師」の定義として、「傷病者若しくはじょく婦に対する療養上の世話又は診療の補助を行うことを業とする者」と規定していますが、この規定は、同法第31条1項本文の「看護師でない者は、第5条に規定する業をしてはならない。」に対応したものです。看護師免許がなければ行えない業務の範囲を画するものです。

例えば、看護師としての医学的な知識経験を要しない場合の介護(一般的なおむつ交換等)についても看護師は日常的に行っていますが、そのような介護は、看護師だけに業務を独占させる理由はないので、同法第5条の行為には含まれません(介護職員等も可能)。しかし、そのような介護に係る契約の事務も、民法第858条の「療養看護」に関する事務に含めて理解することができます。

 

〇病院における「身体抑制」(身体拘束)に係る規定

 精神科病院については、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第36条の規定があります。また、同条3項の規定に基づき、指定医が必要と認めなければ行うことができない行動制限を厚生労働大臣が定めています(昭和63年厚生省告示第129号)。同条の規定に基づく行動制限については、患者等の「同意」は要件とされていません

 なお、診療報酬の算定方法(令和2年厚生労働省告示第57号)の内容として、「認知症ケア加算」というものがあり(医科診療報酬点数表のA247)、「身体的拘束を実施した日は、所定点数の100分の60に相当する点数により算定する。」とされています。そして、「法令」ではありませんが、この加算に係る「身体的拘束」等についての「通知」があり(令和2年保医発0 3 0 5 第1号)、身体的拘束を実施するに当たっては、「実施の必要性等のアセスメント」、「患者家族への説明と同意」、「身体的拘束の具体的行為や実施時間等の記録」、「二次的な身体障害の予防」、「身体的拘束の解除に向けた検討」を行う等としています。

 また、これも「法令」ではありませんが、最高裁判所平成22年1月26日判決(裁判所のウェブサイトの判例のコーナーで検索可能)は、病院(外科)における身体拘束の違法性が争われた事案において、「入院患者の身体を抑制することは、その患者の受傷を防止するなどのために必要やむを得ないと認められる事情がある場合にのみ許容されるべきものである」と判示しています。そして当該事案については、「歩行中に転倒したりベッドから転落したりして骨折等の重大な傷害を負う危険性は極めて高かった」、他に「転倒,転落の危険を防止する適切な代替方法はなかった」、患者の「状態等に照らし、その転倒、転落の危険を防止するため必要最小限度のものであった」として、身体拘束(ミトンの使用)の違法性を否定しています。客観的に見て、当該身体拘束には、いわゆる切迫性、非代替性及び一時性があったため、「必要やむを得ない」と判断したものと考えられます。この判決も、当該身体拘束が違法でないことの理由として、患者等の「同意」の有無を問題としていません。

 

〇身体拘束の「同意書」にサインした場合の成年後見人の責任

 第1に、「同意」の意味を考える必要があります。

 介護保険が適用させる施設及び事業所に係る運営基準においては、「緊急やむを得ない場合を除き」(レジュメ集1の88頁の注4参照)と規定しており、入所者等の「同意」については定めていません。この運営基準に関係する文献として、厚生労働省「身体拘束ゼロ作戦推進会議」発行『身体拘束ゼロへの手引き』(平成13年3月)というものがあります(インターネットで検索可能)。この『手引き』は、「家族の同意」により身体拘束は許容されるという意見に対する疑問又は反省を示しており(4頁)、身体拘束には、客観的な切迫性、非代替性及び一時性が必要としています(22頁)。ただし、これらを満たす場合であっても、事前に本人や家族に説明をして、その「理解」又は「確認」を得ることとしています(23、24頁)。「説明」と「理解」又は「確認」の手続を通じて、身体拘束の可否を慎重かつ適切に判断させる趣旨と理解できます。換言すれば、身体拘束は、「理解」又は「確認」によって許容されるものではなく、あくまでも客観的な切迫性、非代替性及び一時性の存在によって例外的に許容されるという前提に立った上で、同手続を、切迫性、非代替性及び一時性の存否の判断が慎重かつ適切に行われるようにするための機会として位置付けていると考えられます。

上述のとおり、医療機関でも、介護保険の施設及び事業所でも、法令上も判例上も、家族又は成年後見人の「同意」によって、身体拘束が許容されるとはされていません(診療報酬に係る上述の「通知」も、「同意」だけを求めているものでもありません。)。また、家族又は成年後見人に「同意」する権限があるという規定もありません。仮に、「同意」をしたとしても、その法的な意味も効力も不明です。例えば、予防接種においては、予防接種実施規則第5条の2の規定の存在にもかかわらず、成年後見人の同意があれば可能と単純に解されていません(レジュメ集Ⅰの74~75頁参照)。

 第2に、「同意」又は「同意書」の実際を見る必要があります。

 実際には、医療機関でも、介護保険の施設及び事業所でも、「家族の同意」により身体拘束は許容されるという考え方は残っていると思われます。このため、家族又は成年後見人が「『同意』を求められる」ことは少なくないと思われます(レジュメ集1の87頁の図表17参照)。そして、その際には、「同意書」にサインを求められます。ただし、実際の「同意書」の内容は一様ではありません。比較的多いものは、「緊急やむを得ない場合には身体拘束をすることに同意します。」といった文言が印刷されたものと思われます。

 第3に、以上のような『手引き』の理解と実際の食い違いを前にして、成年後見人として、どのように対応する必要があるかを考えます。

「同意書」の内容が一様ではない以上、成年後見人としては、まず、「同意書」の内容を確認する必要があります。もし、「緊急やむを得ない場合には身体拘束をすることに同意します。」という内容のものであれば、成年後見人の職務を説明するとともに、「同意」の意味を確認することになります。そして、『手引き』の趣旨を上述のように理解するならば、身体拘束を許容するという意味での「同意」をする立場にはないことについて理解を求めることになると考えられます(これらは、実際には難しい作業かもしれません。)。その結果、医療機関、介護保険の施設又は事業所が、「同意書」の内容及び表現を『手引き』の趣旨に沿って修正をすることになれば、身体拘束を許容するという意味での「同意書」へのサインという「問題」は解消されるかもしれません。なお、『手引き』は、医療機関を対象としたものではありませんが、上述の判決の内容等から、基本的な考え方は医療機関にも妥当するのではないかと考えられます。

しかし、実際には、医療機関、介護保険の施設及び事業所は、一定の「同意書」の様式を用意していますから、このような基本的な考え方に触れる修正は期待しがたいところでしょう。「同意書」へのサインを成年後見人に求めるのを諦めるだけかもしれません。しかし、それだけでは、成年後見人としてはスジを通せたとしても、『手引き』が求める「説明」と「理解」又は「確認」の手続が省略されてしまい、かえって身体拘束の可否の判断を慎重かつ適切に行う機会が失われるおそれもあります。

従って、仮に、サインをしないとしても、成年後見人としては、医療機関、介護保険の施設又は事業所との間で意思の疎通を図りながら(対立的な関係を避けながら)、「緊急やむを得ない場合」及び「身体拘束」の意味等について、適宜、話し合いの場(サービス担当者会議への参加等)をもつなどして、身体拘束の可否の判断が慎重かつ適切に行われるように注意又は配慮をすることが必要です。

反対に、文面上は「同意」という言葉が使用されてはいても、成年後見人としては、「理解」又は「確認」の意味でサインをする場合(名を捨てて実を取ると言えるかもしれません。)は、サインをする前に、「緊急やむを得ない場合」及び「身体拘束」の意味について適切かつ十分な記載がされているかを確認し、記載の内容に不明確又は疑問な点がある場合は、これらの意味について質問をして確認する等して、身体拘束の可否の判断が慎重かつ適切に行われるようにするとともに、サインをした後も引き続き、サインをしなかった場合と同様の注意又は配慮をすることが必要です。

 サインをする、しないにかかわらず、以上のような注意又は配慮をすることが成年後見人の責任と考えられます。

 

〇 身体拘束と「虐待」との関係

 「高齢者に対する虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」における「養介護施設従事者等による高齢者虐待」の解釈として、『手引き』における「緊急やむを得ない場合」は、例外的に高齢者虐待に該当しないと考えられるとの解釈が示されています(厚生労働省老健局『市町村・都道府県における高齢者虐待への対応と養護者支援について』(平成18年4月。平成30年3月改訂)96頁)(同省のウェブサイトで検索可能)。なお、「障害者に対する虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律」は、明文で、「正当な理由なく障害者の身体を拘束すること」を障害者虐待として規定しています(第2条6項一号、同条7項一号等)。

 従って、高齢者について言えば、「緊急やむを得ない場合」以外に、身体拘束を行えば、「養介護施設従事者等による高齢者虐待」に該当すると考えられますし、「緊急やむを得ない場合」以外でも身体拘束をする旨の「同意書」を作成していれば、その文面自体が不適切な可能性があり、そのような「同意書」に成年後見人がサインすること自体も、不適切な可能性があります。このため、上述したとおり、成年後見人としては、まず、「同意書」の内容を確認する必要があります。ただし、実際には、このような白紙委任的な「同意書」はあまり無いのではないかと考えられます。

上述したような「緊急やむを得ない場合には身体拘束をすることに同意します。」という内容の「同意書」の場合の場合は、文面上は、「緊急やむを得ない場合」という限定が付されているため、これにサインをしたというだけでは、成年後見人も虐待に加担した等としてその責任が問われるという意味での「問題」にはならないと考えられます。ただし、上述したとおり、「緊急やむを得ない場合」及び「身体拘束」の意味について適切かつ十分な記載がされているかを確認し、記載の内容に不明確又は疑問な点がある場合は、サインをする前に、これらの意味について質問をして確認すること等が必要です。

 

〇「一身専属的行為」

「一身専属的行為」という言葉が、婚姻、縁組、遺言等と同様に、他の者が代わってすることはできない行為という意味であって、「身体拘束」ではなく、身体拘束を許容する意味での「同意」は、「一身専属的行為」には「入らないと考えて良いのでしょうか?」というご質問であるとすると、「一身専属的行為」であるか否かは別として、上述したとおり、成年後見人は、そのような「同意」をする立場にはないと考えられます。なお、「一身専属的行為」という言葉は、本人であれば同意ができるという意味合いをもちますが、身体拘束については、客観的な切迫性、非代替性及び一時性の存在こそが必要であり、また、本人が任意かつ自由に、そして真に同意できる状況にあるかという問題がありますから、身体拘束に関してこの言葉を使用する場合は注意が必要でしょう。

 

〇医療契約と「入院診療計画書」

 一般的には、医療契約が締結されていることを前提として、その契約に基づく医療提供者側の義務として、「入院診療計画書」が作成されていると考えられます。従って、「入院診療計画書」は、医療契約の内容を具体化したものとは言えるでしょうが、一般的には、医療契約の「契約書」(医療契約の締結に係る書面という意味での契約書)ではないと考えられます。このため、例えば、入院後、「入院診療計画書」が作成されるまでの間の医療処置に過誤があって、患者に事故が生じた場合でも、医療契約に基づく義務の違反と評価できることになります。

 

〇医療契約と治療行為等の同意(承諾)

 一般的に、投薬、注射、輸血、穿刺、手術等の治療行為についての同意(承諾)と医療契約の締結とは区別して考えられています。検査についても、同様です。現実には、両者を区別しがたい場面もあり得ますが、患者の意思と利益を保護するためには、両者を区別して考えることが必要です。

 

 

市民後見概論(市民後見人の活動と支援)
 小佐波幹雄、佐々木優(品川成年後見センター)

質問1

質問 回答

先日は、わかりやすいご説明をありがとうございました。品川区では、市民後見人を支えるバックアップ体制があるなど、安心して市民後見人の仕事ができる素晴らしい体制が整っていると感じました。私の住んでいる地域では、残念ながら、ここまでの仕組みは整っていないようです。

ホームページをしたところ、あんしんサービスを利用するためには、月々2000円の利用料がかかるとのことでしたが、実際に認知症などを発症した場合は、どのくらいの利用料をいただいているのでしょうか。また、市民後見人の方々は、完全に手弁当で活動されていますか。それとも多少の報酬を得ているのでしょうか。

私も、将来的に任意後見関係の仕事をしたいと考えています。ご本人に大きな負担をかけず、かつ私自身も少しは金銭面でもやりがいを感じるために、どの程度の報酬をいただくのが適当なのか参考にさせていただければ幸いです。差し支えない範囲で教えていただければと存じます。

ご質問ありがとうございます。

あんしんの3点セットは品川社協が行っているサービスで、①あんしんサービス(見守り)契約、②任意後見契約、③公正証書遺言作成支援をそれぞれ締結します。
当会は初回に契約手続き支援料として3万円を頂いています。以降は基本料金として月額2千円が発生します。

①あんしんサービス(見守り)契約で、当会に所属する支援員2名が毎月ご自宅を訪問しますが、支援員には当会からお給料が発生し、時給換算で支給しています。
また、見守りの段階で、契約者から病院の付き添いや、介護サービス等の契約時の立会いなどの希望があれば、ご希望の内容によって、1回もしくは1時間1,200円+交通費実費を当会が頂いて対応します。
判断能力の低下がみられた場合、②任意後見契約を発効させ、任意後見監督人選任の審判が決定すると、①あんしんサービス(見守り)契約は終了します。

任意後見人(当会)への報酬は、任意後見契約公正証書に則り、発効時の本人の収入や財産状況によって区分を設け、5千円~3万円の範囲内で月額を決定しています。
これらの報酬を当会が受領します。

品川区の市民後見人は、上記のあんしんの3点セットには関与しておらず、法定後見の案件のみ受任します。
市民後見人には案件ごとに報酬付与申立をしてもらい、家庭裁判所の審判に基づいて本人の財産から支出します。
ただし、報酬を受領することで生活が成り立たなくなる場合は、品川社協の「成年後見人報酬等助成事業」を利用し、原則として月額1万円以内で品川社協が市民後見人に対し報酬を助成します。