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地域後見推進プロジェクト

共同研究
東京大学教育学研究科生涯学習論研究室+地域後見推進センター

講師への質問と回答

目次:

1. 成年後見制度概論: 飯間敏弘
2. 市民後見概論: 品川成年後見センター
3. 法定後見制度 Ⅰ・Ⅱ: 髙村浩
4. 後見人の実務 Ⅰ: 木原道雄
5. 任意後見制度: 阿部正幸
6. 知的・精神障がいの理解:佐多範洋
7. 後見実務の演習 Ⅰ: 飯間敏弘

 

※講師のご都合等の事情により、いただいたご質問にご回答できない場合(または事務局が講師に代わってご回答する場合)がございますので、ご了承ください。
※回答は各講師の個人としての見解であり、各講師が所属する組織等の見解ではございませんので、その旨ご了承ください。
 

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1. 成年後見制度概論
   飯間敏弘(東大助教)

質問1

質問 回答
 1限の牧野篤先生と3限の飯間敏弘先生ともに「成年後見の3つの理念」(①自己決定権の尊重、②残存能力の活用、③ノーマライゼーション)を述べられました。
 この「成年後見の3つの理念」は法律条文でしょうか?行政文書または裁判所用語でしょうか?
引用元があれば教えてください。
 「成年後見の3つの理念」につきましては、法律条文でも行政文書でも裁判所用語でもございません。
 あえて言えば、いわゆる講学上の概念と言うことができ、当該理念は、成年後見に係る領域において、通説として広く一般に理解されている概念と言うことができます。
 したがって、特に特定の引用元もございません。

質問2

質問 回答

 事実行為の積み重ねの上に、法律行為をあることを教えてくださり、ありがとうございました。
市民後見人として、身上保護を中心に働く上でとても考えさせられました。

 しかし一方で、専門職後見人や法人後見事業所のサイトや書籍には、成年後見人は事実行為はしませんと記載されています。パンフレットのイメージ図にも、後見人が被後見人のいないところで、1人で考えているイラストが掲載されているものもあります。
 こうした後見人は事実行為はしない考えが、訪問回数の少なさにもつながっているものと思っています。

 しかし後見人が何をしているのか、被後見人にも、被後見人を支援する人たちにも知られていないことは、「後見人は何をする人なのかわからない」というサービス側の認識にもなっています。
 具体的には、後見人は面会にくるけど介護をしてくれないというサービス提供側の不満や、たまに来てこずかいを渡しにくる人であって、まさかサービスの内容に意見しにくる人とは思ってもみないなどの誤解です。

 そこで後見人は法律行為をするために事実行為をするものだと認識がサービス提供側に理解されるためには、具体的にどのように動いていけばよいのか、教えていただけるとうれしいです。

 サービス提供者において、少なからぬ人が「後見人は何をする人なのかわからない」という認識を持っているとのことですが、以下のような説明をサービス提供者に行っていけばいいように思われます。

(1)後見人の職務は基本的には法律行為(金銭管理、契約、役所での諸手続等)を行うことであり、事実行為(ヘルパーや介護者等が行っているような仕事(介護、掃除、買物、料理等))を行うことではない。

(2)ただし、適切な法律行為を行うために必要な事実行為は行う必要がある。例えば、①本人の心身や生活の状況を把握するために定期的に面談する、②締結したサービス提供契約が契約通りに履行されていない場合、適切に履行するようにサービス提供者に対して(本人の代理人として)主張する、などの行為が挙げられる。

 上記を踏まえ、例えば、誰かから「後見人は介護や世話もやってくれるのか?」と問われれば、「後見人は介護や世話をする人ではなく、介護や世話をしてくれる人の手配(契約等)をする人だ」と答えればよいですし、また「後見人は法律行為だけを行って、事実行為は一切しないのか?」と問われれば、「後見人は適切な法律行為を行うために必要な事実行為は行う必要がある」と答えればよいでしょう。

 

 

2. 市民後見概論(市民後見人の活動と支援)
 品川成年後見センター

質問1

質問 回答

  2024年10月20日の講義を受講させていただきありがとうございます。下記のご質問事項が3点ございます。
①行政と密に連携がとるために社協様として特に尽力したことは具体的にはどういったことでしょうか?
②私はケアマネジャーなのですが、後見人として月に一度の訪問の具体的内容は、ケアマネジャーの行うモニタリングのようなもの、と考えていいのでしょうか?
③品川のような.市民後見人の支援があまりない地域の場合は、どのように活動していけばいいとお考えでしょうか。
 以上、よろしくお願い致します。

 回答は下記のPDFをご覧ください。

 品川成年後見センターによる資料

 

3. 法定後見制度 Ⅰ・Ⅱ
 髙村浩(弁護士)

質問1

質問 回答

 10月20日講義の最後に認知症デイの管理者の方から利益相反行為についてのご質問がございました。
 似たような質問なのですが、私はケアマネジャーですが、私が所属する法人の居宅介護支援事業所(さいたま市)にてケアマネジャーとして担当している利用者様について、さいたま市岩槻区で市民後見人の業務を行う、というケースの場合、ケアマネ=市民後見人、という立場になるかと思います。
 ご本人の意思も確認し医師も参加の上、病院内のカンファレンス等にて、施設入所やデイサービス利用の必要性の合意が取れた、として、私が所属する法人運営の有料老人ホームにご紹介したりデイサービスにケアマネとしてサービス計画書を作成し後見人として代理する、といったことは利益相反行為の可能性が高いと考えてよろしいでしょうか?

 そもそも、このケースに限らずですが、別法人施設または別法人デイサービスへのご案内なら、同地域での、同じ利用者様(であり委任者)のケアマネジャー兼市民後見人というケースは可能なものでしょうか。
 以上よろしくお願い致します。

① ケアマネジャーが自分の担当する利用者の成年後見人に就任した場合

 この①の場合であっても、居宅介護支援等の介護契約は、介護サービスを提供する法人と利用者との間の契約であって、ケアマネジャーと利用者との間の契約ではありませんから、ケアマネジャー兼成年後見人と利用者本人とは、利益相反の関係に立つことはないという考え方もあり得ます。
 なお、民法第843条4項は、成年後見人の選任に当たっては、「成年被後見人との利害関係の有無」を考慮しなければならないと規定していますが、この①のような場合については特に規定はしていません。
 しかし、例えば、ケアマネジャーが、自分で作成したケアプランについて、その利用者の成年後見人として同意することは、「利益が相反する行為」(民法第860条・第826条1項)になりうると考えられます。また、この1の場合は、ケアマネジャーとしての職務と成年後見人としての職務の混同が生ずるおそれもあります。例えば、ケアマネジャーがその利用者の居宅を訪問したとき、その訪問は、ケアマネジャーとしての訪問なのか、成年後見人としての訪問なのか区別ができなくなるおそれがあります。サービス担当者会議への出席も一人二役になります。

 以上に対し、本質問の場合に、ケアマネジャーが、成年後見人として、その所属する法人との間で、入所契約等の介護契約を締結しても、それは、法人と成年後見人との契約ですから、一人二役のケアプランの作成・同意等の場合とは異なります。
 しかし、ケアマネジャーは、その所属する法人との間の雇用契約に基づき、その法人から指揮命令を受ける立場にあります(法人の利益を図る立場にあると言えます)から、成年後見人として、その利用者の利益を図ることができるかという問題は生じます。ケアマネジャー自身の法人内での立場や法人の利益への配慮が優先して、契約を締結するのではないかという問題です。また、そのケアマネジャー自身は、その利用者の利益を図って契約を締結したつもりでも、その所属する法人の利益を図る立場でもあることから、利用者の親族等の関係者からは、利用者の利益を図っていないと疑われるおそれもあります。この意味で、その所属する法人との間で、入所契約等の介護契約を締結することは、「利益が相反する行為」とは言えなくても、少なくともその疑いをもたれる関係はあると言えます。

 利用者本人の同意があれば、この問題が解消できる可能性はありますが、後見が開始されている以上、その同意の有効性は問題になり得ます。介護サービスに係る契約は利用料等の財産上の負担を伴いますから、医師等のサービス提供者は、この問題を解消する立場にはないと考えられます。

② ケアマネジャーが、その担当外ではあるが、その所属する法人のサービスの利用者の成年後見人に就任した場合

 この②の場合では、一人二役によるケアプランの作成・同意や職務の混同等の問題は、基本的には生じないと考えられます。ただし、配置転換等によって担当になる可能性はあり、配置転換等を拒否又は回避できるか、担当になった場合の対応等の問題が発生する可能性は残ります。

 そして、担当ではなくても、ケアマネジャーは、その所属する法人との間の雇用契約に基づき、その法人から指揮命令を受ける立場にあることに変わりはなく、①の場合と同様に、成年後見人として、その利用者の利益を図ることができるかという問題はやはり生じます。例えば、その法人のサービスについて、成年後見人として、苦情を申立てることができるか、転倒等の事故が発生した場合に損害賠償請求ができるかという問題です。ケアマネジャー自身の法人内での立場や法人への配慮が優先して、これらを躊躇うのではないかという問題です。また、そのケアマネジャー自身は、その利用者の利益を図っているつもりでも、その所属する法人と利害が衝突するような立場に身を置いていることから、利用者の親族等の関係者からは、利用者の利益を図っていないと疑われるおそれもやはりあります。このため、①の場合と同様に、利益相反とは言えなくても、少なくともその疑いをもたれる関係はあると言えます。

③ ケアマネジャーが、その所属する法人のサービスの利用者ではない地域の住民の成年後見人に就任した場合

 この③の場合では、①又は②の場合のような問題は、基本的には生じないと考えられます。もっとも、地域によっては、その住民が、ケアマネジャーが所属する法人のサービスの利用者になる可能性はあり、その場合は、①又は②の場合と同様の問題が発生する可能性は残ります。

④ まとめ

 以上の次第ですから、介護関係の職員であって、市民後見人になろうとされる方は、①又は②の場合は、その候補者となることを避けた方が良いでしょう。市町村長申立ての場合は、候補者の人材が限られていること等もあって、これらの場合であっても候補者とし、裁判所もその申立てどおりに選任する可能性がありますが、利用者本人のためにも、市民後見人が難しい立場に立たされないようにするためにも、これらの場合は避けた方が良いでしょう。
 なお、成年後見人を複数選任し、特定の成年後見人による介護契約が利益相反になる、又はそのおそれのある場合は、他の成年後見人が契約するという方法もあり得ますが、現実的で簡明な方法と言えるかは疑問があります。

質問2

質問 回答

 講義において、被後見人のために成年後見制度があることを教えていただき、ありがとうございました。

 施設などの福祉サービスと契約するだけであれば、財産管理で対応できる。
しかし適切にサービスが行われているかの確認、適切に行われていないときの苦情の申し入れなど被後見人の生活を守るために身上保護があると教えていただきました。

 しかし専門職後見人や法人後見事業所のサイトや書籍では、身上保護とは契約することだと説明されています。そこにはサービス内容を確認することも、そうした後見人の働きが虐待防止に役立つことも書かれていません。
 こうした身上保護への意識の低さが、専門職後見人による訪問回数の少なさにつながっており、訪問先の施設からすると、後見人は何をする人なのかわからない。たまに来てこずかいを渡していく人程度の認識になっているように思っています。
 市民後見人として働く上で、後見人が何をする人なのかサービス提供側に理解されていないことは、施設を訪問する上で妨げにこそなりますが、プラスに働くことはありません。

 そこで身上保護とは、サービスの確認や苦情申し立ても含むことを、施設側に理解してもらうためには具体的にどのように動いていけばよいのか、教えていただけるとうれしいです。

 民法は、成年後見人の職務について、「成年被後見人の生活、療養看護及び財産の管理に関する事務」と規定しており(第858条)、「財産管理」と「身上保護」に二分して規定してはいません。また、民法は、「身上保護」という用語を使用もしていません。そして、「身上保護」の意味について、確定的な定義もありません。

 例えば、最高裁判所が毎年公表している『成年後見事件の概況』では、「申立の動機」として、「身上保護」と「介護保険契約」を区別して記載しています。また、介護契約については、その契約が継続的なものであって、利用者の心身の状態等も変化することから、定期的に又は随時、入所先の施設を訪問する等して、その心身の状態等に応じた適切な介護サービスが提供されているかを確認する必要がありますが、これは、介護契約に基づく、介護サービス事業者の債務の履行の確認又は確保という意味での「財産管理」として考えることも可能です。このため、成年後見人として、「身上保護」という言葉を使用する必要性はないとも言えます。

 成年後見人の職務の内容及び範囲については、介護サービス事業者側に事前に説明することが必要又は適切ですが、「身上保護」という言葉を用いても理解はされず、むしろ、その言葉からは「介護」も含むように連想されるおそれすらあります。このため、「身上保護」という言葉の使用の有無にかかわらず、できるだけ、具体的に説明することが必要又は適切です。
 例えば、介護契約の締結、更新、変更及び解除、サービス担当者会議への参加、ケアプラン等の計画への同意・不同意、日用品の購入又は私物の洗濯の有無、苦情の申立及び利用者負担分の支払い等です。また、「身元引受人」になるか否か、身体拘束の手続への関与の有無及びその方法、転倒等の事故が発生し、又は容体が悪化した場合の連絡先及び連絡方法、受診又は入退院の必要が生じた場合の受診等の手続への関与及びその方法(受診又は入退院の際の同行等)等についても、できるだけ具体的に話し合っておくことが必要又は適切です。

 

4. 後見人の実務 Ⅰ(後見開始時の申立て、就任時の事務)
 木原道雄(司法書士)

質問1

質問 回答

 先生のように利用者本人の意思決定を支援したり、関係者と連携をはかって利用者本人の利益のために活動されている話を聞くことができたのは、とても感動しました。
 一方で、専門職後見人のなかには、自らの事務所運営の経費ときて、後見報酬を安定収入としてとらえ、できるだけ何もしない、利用者本人に会いにいくことすらしない後見人がいることも事実です。
 そこで先生のように、利用者本人のために活動しつつ、事務所を安定して運営していくためには、一人の後見人でおよそ何件くらい受任するのが目安となるのか、教えていただけるとうれしいです。

 私は司法書士であるため、後見以外にも登記業務などもあります。後見でかかわった方々や被後見人が無くなった後の相続登記などがあります。
 被後見人の意思決定に積極的にかかわることで、その被後見人にかかわっている皆さんから声をかけてもらえるようになっています。
 そのようなことで事務所経営は何とかなっています。
 医療、福祉、介護の義理堅い方々に支えてもらっています。

 

5. 任意後見制度
 阿部正幸(公証人)

質問1

質問 回答

 任意後見制度について、後見活動に携わる専門職後見人のサイトでも宣伝がなされています。
しかしほとんどのサイトにおいて、任意後見契約には、家庭裁判所が選任した任意後見監督人が必ずつくこと。そして任意後見監督人への報酬や事務費用を利用者本人が支払うことの説明がなされていません。

 これでは、任意後見契約や利用者本人と、利用者本人が選んだ後見人とだけが関係する契約のように誤解を与えてしまうのではないかと思うのですが、先生はこの現状についてどのように考えられているのか教えていただけると、任意後見契約について説明するときの助けになります。

1 任意後見契約に関する法律第2条第1号は、任意後見契約が「任意後見監督人が選任された時からその効力を生ずる旨の定めがあるものをいう。」と規定しており、同法第7条第4項は、任意後見監督人の報酬について、法定後見人の報酬について定める民法862条(家庭裁判所は、後見人及び被後見人の資力その他の事情によって、被後見人の財産の中から、相当な報酬を後見人に与えることができる。)を準用しています。
 報酬付与のためには、任意後見監督人が家庭裁判所に報酬付与の申立てをする必要がありますが、ほとんどの事案においては任意後見監督人に弁護士、司法書士などの専門職が選任され報酬が付与されています。また、任意後見監督人の職務追行費用(交通費、郵送代、コピー代などの実費)も、委任者本人の財産から適宜受け取ることができます(任意後見契約に関する法律第7条4項で準用する民法861条第2項)。

2 後見活動に携わる専門職後見人のサイトを詳しく見たことはありませんでしたが、ご質問に基づき、いくつかのサイトを見てみたところ、ご指摘のとおり、任意後見契約締結後に任意後見契約が発効したときは任意後見監督人に対する報酬等の支払が必要であることの記載のないものが少なからずありました。
 顧客誘引のためのサイトにどこまでの情報を記載すべきかはともかくとして、任意後見契約を締結した後にいかなる報酬の支払義務が生じるかは、契約当事者にとって、任意後見契約を締結するかどうかを判断するための重要な情報であるといえますから、そのような説明がないままに任意後見契約を締結させた場合、紛争の基になるおそれがあります。
 したがって、少なくとも、任意後見契約を締結するまでの間のいずれかの時点で、任意後見監督人に対する報酬等が発生することを契約当事者に説明するべきでしょう。

3 任意後見契約は公正証書によってしなければならないとされています(任意後見契約に関する法律第3条)。私は、任意後見契約公正証書作成の際には、公証人が、契約締結前に、契約当事者に対し、任意後見契約発効後は任意後見監督人に対する報酬等が発生することを説明すべきであると考えており、現にそのように運用しております。

4 以上のとおりですので、任意後見契約について説明する際には、任意後見監督人が選任されること、任意後見監督人に対する報酬等が発生することについても説明しておいていただければと思います。

 

6. 知的・精神障がいの理解
 佐多範洋(医師)

質問1

質問 回答

 支援者が無理をしないこと、支援者がつぶれないように限界を設定することの大切さがよくわかりました。
その一方で重度の障害のある子どものいる親は頼るところがなくて一人(もしくは夫婦)で子どもを背負い込んでいるケースがあります。 

 障害者支援施設では「強度行動障害」など虐待リスクのある人の利用を断るようになっています。一度目は支援する力がないからやむを得ず断ったのだとしても、その後研修をして受け皿を広げるわけでもなく、虐待リスクのある人や支援者の負担になる人の利用を「断り続ける」こととしています。
 ある自治体の相談支援事業所の会報では、障害者がグループホームに入ることはとてもハードルが高いこと。グループホームに障害者が選ばれる条件は、まずは他害行為や物損がないこと、次に異性介助を受け入れることだと書かれていました。
 また、放課後デイでは手帳を持たないレベルの人を集めてプリント学習させることで経営が成り立ってしまう反面、重度の利用者を断るようになっています。

 支援者が「無理をしない」ことは大切なのですが、これらの事例のように支援力をあげるための努力もしないというのは違うのではないかと思っています。

 しかし福祉でビジネスをしている事業者にとっては、支援者研修など経費がかかることには関心を持たないところがあります。いわゆる「最低限度の支援だけ保障する、文句があるなら他へ行け。代わりの利用者はいくらでもいる」というスタンスの事業所に対して、成年後見人として被後見人の生活の質向上のために彼らに対してどのようなアプローチをとれば効果的と考えられるのでしょうか。

 本質的な質問だと思いますが、答えに詰まってしまいます。

 千葉県でも2013年、袖ケ浦福祉センターで知的障害の男性が虐待の末亡くなったのですが、再発防止の検討委員会によると、そこに県内の重症困難事例が集まっていたことが一つの原因とされていました。
 結局同センターは昨年春に廃止になりましたが、受け皿は十分でなく、家族としても途方にくれる状況がありました。

 行動障害の激しい方のために「児童心理治療施設」(昔の「情緒障害児 短期治療施設」)が全国に整備されていますが、なんと東京にはなく、千葉もやっと最近指定されました。
 ただ、利用者による職員への暴力や設備の破損が日常茶飯事で、退職される職員があとをたたないとも聞いています。

 自分が精神科医になった頃は、まだ今のようにグループホームなどが整備されておらず、知的障害児が産まれたら、うちの家系にそんな子はいないと母親は責められ、親亡き後のために母親たちがお金をためて出し合って施設を作る、みたいなことが全国各地で行われていた時代でした。
 そんな状況をどうにかできないかと思ったのが、精神科医を目指した一つのきっかけでした。(いや何もできないんですけどね)

 その時に比べて、グループホームが全国各地にできつつあり、最低賃金の保証されるA型作業所も増えてきたことに感激しますが、まだまだ圧倒的に数が足りないですし、自法人のグループホームと作業所・デイケアを行き来させ囲い込む貧困ビジネスが横行したり、そもそもノウハウ共有も少なく、保証される収入も少ないため、事業がやりがい搾取的になっている側面も強いように感じます。

 そういう中で個人的に心がけているのは、対応力の弱い事業所やグループホームとも可能な限り連携を取って、まずは事業を継続できるように、困ったケースがあったときに相談しあったり、多くの事業所が関与できるようにケースワーカーと連携したりし、地道にノウハウを共有し、自信をつけて頂くことを目指しています。

 なんだかんだ思いがあってこの事業に参入しているはずですから、その思いが満たされ、更なる事業拡大につながればと思っています。

 なお、私のいる千葉県の海匝圏域(旭市・匝瑳市・銚子市)は、比較的福祉が頑張っているところではあります。
 3回もホームに放火した方を、また退院して受け入れるホームがあったり、道行く人を投げ飛ばして訴訟になっているような方や、殺人事件を起こしたような方を受け入れたりしているのは、本当に頭が下がります。
 でもその背景には、地域の基幹病院である旭中央病院が、定期的に困難事例に対してカンファランスを開いたり、グループホーム生活の定着のために、はじめは病院スタッフが一緒に泊まり込んだり(医師とかも!)していて、やっぱりみんなでどうにかしていこうという土壌があることが、本当に大事なんだろうと思います。

 なお、障害者がグループホームに入るハードルの高さを感じたのは、10年位前ですが、松戸市の方のためにグループホームを探そうとしたら、松戸市に2人分しかないと言われたことがあります。人口50万人ですよ?!

 また、今は分かりませんが、世話人さんたちは委託業務扱いで、週4日泊まり込んでも月収10万行かなかったり、そういう世界で、同性介助の入浴の手を確保することは現実的に困難だと思うのです。
 ただそれでも、日中活動の中で同性介助で入浴できるところを確保できないか、行動障害があり興奮したら止まらなくなる人に対し、お薬を使うことで楽に生活できるようにならないか精神科医と連携ができないかなど、あきらめずに打開策を模索することも大事かなと思います。

 それでもどうやっても支援が組み立てられられず、途方に暮れる時もあるかと思いますが・・・国境なき医師団では、意外と精神科スタッフのニーズも高いそうです。
 言葉もろくに通じないのになぜ?と思いますが、紛争地などで支援していると、何日も命からがらで逃げて、医療がある所に到着するまでに、抱いている子供は死んでいたり、手遅れになっていることが少なくないそうです。
 その時に一緒に涙を流すことしか出来ないのですが、そういう時に寄り添うケアが必要なようなのです。

 なかなかうまくいかなくても、当事者と一緒に悔しさも分かち合いつつ、味方になることを忘れなければ、ベストのケアができるのかなと思います。

 全くまとまらなくてすみません。ご質問ありがとうございました。
 ぜひこれからの学びも活動も、頑張って下さい!

 

7. 後見実務の演習 Ⅰ(後見申立演習の解説)
 飯間敏弘(東大助教)

質問1

質問 回答

 法定後見開始申立のための書類は(演習ではなく実際の書類)どうやって入手しますか?(講義中にご説明されていて、聞き逃していたら、すみません) 

 もし、どこかのホームページからダウンロードできる場合、そのホームページのどのあたりにあるのか、すぐに分かりますか?
 あるいは、うまくダウンロードできない場合は直接、そちらへ取りに伺うことはできるのでしょうか?

 法定後見開始申立のための実際の書類は、下記のサイトでダウンロードすることが可能です。

 後見開始の申立書

質問2

質問 回答

 後見人が被後見人の通院介助をしてもよいのでしょうか。
 たとえばグループホームに入居している被後見人に通院の必要があります。グループホームでは通院介助はできないと断られており、近隣の居宅事業所でも通院介助ができるヘルパーを手配することができないと断られています(どちらも人手不足が理由です)。
 その場合、後見人がグループホームから病院までの往復移動と病院内での診察同行などの通院介助を行ってもよいのでしょうか。
 また、上記のように通院介助をすることが可能として、それを一度や二度ではなく、継続して行うことはよいのでしょうか。

 後見人の職務は基本的に法律行為を行うことにありますが、事実行為を行うことを禁じているわけではありません。
 法律行為を適切に行うために必要な事実行為は行う必要がありますし、それ以外の事実行為についても任意に行うことは可能です。
 したがって、通院介助を行うことは可能ですし、それを継続して行うことも可能です。

 ただし、任意に事実行為を行う場合は、それをやり過ぎて後見人が燃え尽きてしまわないように、余裕のある範囲で行うようにするとよいかと思われます。

 

 

 

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