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地域後見推進プロジェクト

共同研究
東京大学教育学研究科生涯学習論研究室+地域後見推進センター

講座シラバス

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Ⅰ. 座学(45時間)

1. オリエンテーション

講座の開講のご挨拶および講座を円滑かつ適切に進めていくためのオリエンテーションを、講座の始めに行う。

科目名および講師(所属)

時間
(分)
科目の内容

講座の開講の辞およびオリエンテーション

遠藤英嗣(地域後見推進センター理事長、弁護士)
牧野篤(東大教育学研究科 教授)
佐々木佐織 (東大教育学研究科 特任専門職員)

120 講座の開講のご挨拶、ならびに講座を円滑に進めていくためのオリエンテーション(講座の内容や留意事項、講座の進め方等に関する具体的な説明や事務連絡など)を行う。
また、受講生による自己紹介等のグループワークも実施する。

 

2. 日本の高齢社会

少子高齢化が進む日本の人口や財政などの現状、および超高齢化の時代における地域社会のあり方について学ぶ。

科目名および講師(所属) 時間
(分)
科目の内容

日本の高齢社会 Ⅰ(高齢社会の理念・あり方)

牧野篤 (東大教育学研究科 教授)

90 超高齢化の時代における地域社会のあり方(地域に暮らす人々の自己決定の尊重と支援、地域的な助け合いに基づくコミュニティの構築など)について学ぶ。

日本の高齢社会 Ⅱ(高齢社会の課題と展望)

森田朗 (東大 名誉教授)

60 日本の高齢社会の課題(高齢化率や人口動態の推移、社会保障や財政の現状など)、およびその将来の見通しや展望について理解する。

 

3. 成年後見の制度・法律

成年後見(法定後見と任意後見)に関する制度や法律について、基本的な事柄を一通り理解するとともに、市民後見の役割や理念などについて学ぶ。

科目名および講師(所属) 時間
(分)
科目の内容

成年後見制度概論

飯間敏弘 (東大教育学研究科 特任助教)

90 成年後見制度の趣旨や理念を理解し、制度の全体像を把握するために、後見制度全体の概要および法定後見と任意後見の基礎について学習する。

法定後見制度 Ⅰ・Ⅱ

髙村浩 (弁護士、髙村浩法律事務所)

180 法定後見制度について、各類型の特徴や違い、後見人が有する権限の内容、財産管理や身上保護に関する事務、後見報酬、後見監督などについて学ぶ。

任意後見制度

阿部正幸 (公証人、神田公証役場)

90 任意後見制度について、制度が利用される状況やその手続きの流れ、任意後見契約の内容、法定後見との相違点、任意後見に付随して結ばれることが多い諸契約の内容などについて学ぶ。

市民後見概論

品川成年後見センター

90 市民後見の役割・理念、実務における規範や倫理、期待される市民後見人像(市民後見の特徴や強み等)、市民後見人の活動と支援のあり方について理解する。

 

4. 対象者の理解と接し方

高齢者の老化や認知症、精神障がいや知的障がいなどに関する医学的な基礎知識、ならびに対人援助に関する理論や基礎的な技術について学ぶ。

科目名および講師(所属) 時間
(分)
科目の内容

高齢者および認知症の理解

小川純人 (東大医学系研究科 教授)

90 高齢者の老化や疾患、生活機能などについて理解するとともに、認知症に関して、その種類や症状、特徴、治療や接し方などについて学習する。

知的・精神障がいの理解

佐多範洋 (医師、ここからクリニック院長)

90 知的障がいおよび精神障がいについて、障がいの種類やその症状、特徴などを医学的観点から学び、知的障がい等に関する理解を深め、対象者との接し方を学ぶ。

対人援助の基礎

高橋美保 (東大教育学研究科 教授)

90 自己洞察や自己覚知、傾聴や共感などといった、対人援助に係るコミュニケーション技術、カウンセリングや面接手法などに関する理論や実践について学ぶ。

 

5. 後見関連制度・法律

後見事務を行う上で必要となる関連制度・法律(年金、介護保険、生活保護、民事信託、税務申告など)について学ぶ。

科目名および講師(所属) 時間
(分)
科目の内容

後見関連制度・法律 Ⅰ (生活保護)

梶野友樹(厚労省医政局総務課長(元保護課長、元後見制度担当参事官))

60 日本の生活保護制度の概要(制度の仕組み、保護の要件、申請の手続き、保護の内容・基準、関連施設等)および生活困窮者自立支援制度について学ぶ。

後見関連制度・法律 Ⅱ(地域包括ケア等)

石山麗子(国際医療福祉大学大学院 教授)

90 日本の地域包括ケア(住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供されるシステム)に関する諸制度および認知症ケアについて学ぶ。

後見関連制度・法律 Ⅲ (社会保障制度全般・年金)

樽見英樹(日本年金機構 副理事長、厚労省 元事務次官)

90 日本の社会保障制度全般(社会保障財政の現状、社会保障政策の歴史・変遷、現在の社会保障政策の概要と展開のあり方など)、および年金制度(各年金の仕組みや特徴、制度の現状や課題など)について理解する。

後見関連制度・法律 Ⅳ(税務申告)

小野寺信哉(税理士、税理士法人昴星)

60 本人に係る各種税金(所得税、相続税、贈与税など)についての税務申告(所得税の確定申告や相続税の申告など)を適切に行うための方法や留意点などについて学ぶ。

 

6. 地域福祉と権利擁護

地域福祉と権利擁護に関する諸制度について、その具体的内容や施策の展開および実施のあり方などを理解する。

科目名および講師(所属) 時間
(分)
科目の内容

地域福祉と権利擁護 Ⅰ(地域福祉と共生社会)

藤井博志(関西学院大学 教授)

90

地域共生社会を実現するために必要とされている地域住民の主体的参画、分野横断的・総合的なサービス提供、包括的支援体制の構築などの態様やあり方について学習する。

地域福祉と権利擁護 Ⅱ(障がい者の支援、虐待防止等)

曽根直樹 (日本社会事業大学 教授)

90 障がい者等に対する支援のあり方および虐待の防止について、「障害者総合支援法」や「障害者虐待防止法」をはじめとする各種制度の概要や施策の展開などについて学ぶ。

地域福祉と権利擁護 Ⅲ(権利擁護の視点と活動)

佐々木佐織(東大教育学研究科 特任専門職員)

60

地域の認知症高齢者等を始めとする人々の生活を支援し、その権利を擁護するために必要となる視点、ならびに実際の福祉および権利擁護の取り組みの態様について学習する。

地域福祉と権利擁護 Ⅳ(障がい者の権利、差別解消等)

崔栄繁(DPI日本会議 議長補佐)

90 障がい者の権利擁護や差別の解消等について、「障害者権利条約」の理念や内容、「障害者差別解消法」をはじめとする各種制度の概要や施策の展開などについて学ぶ。

 

7. 後見の実務と事例

各地域において後見活動を行っている後見人や実務家などから、実際の後見実務のあり様や実施方法、具体的な事例などについて学ぶ。

科目名および講師(所属) 時間
(分)
科目の内容

後見人の実務 Ⅰ・Ⅱ(後見開始時の申立て、就任中の後見事務等)

木原道雄(司法書士、木原道雄司法書士事務所)

180 後見の開始時および開始後に行われる後見事務の具体的内容(後見開始の申立て、本人の財産管理や身上保護に係る事務、後見事務報告に係る事務など)について学ぶ。

後見人の実務 Ⅲ(死後事務、信託等)

遠藤英嗣(弁護士、地域後見推進センター理事長)

90 本人の死亡によって後見が終了したときに、後見人が行う事務(死後事務)、および後見制度との組み合わせや代替策として利用できる民事信託の仕組みについて学習する。

後見活動の事例 Ⅰ(専門職後見)

中道基樹(行政書士、ナカミチ行政書士事務所)

90 現在、実際に活動している専門職の後見人から、日頃行っている後見業務や実務のあり様、本人の生活等への支援の態様、直面している課題などについて学ぶ。

後見活動の事例 Ⅱ(市民後見)

成年後見普及協会

60 現在、実際に活動している市民後見人から、日頃の後見業務や実務のあり様、本人の生活等への支援の態様、後見法人の運営のあり方や今後の課題などについて学ぶ。

財産管理の実務(不動産の管理)

全国住宅産業協会

60 本人の不動産の管理のあり方について、不動産取引および契約の方法、不動産に係る制度、不動産の相続、不動産管理の実務、事例の検討などについて学ぶ。

身上保護の実務(意思決定支援等)

水島俊彦(法テラス 常勤弁護士、成年後見制度専門家会議 委員)

90 身上保護の充実が課題とされている中、近時、注目されている意思決定支援(本人が意思を形成し表明することを支援する活動)に関して、その内容や具体的方法などを学ぶ。

 

8. 民法の基礎

民法について、後見人として活動していく上で必要となる基本的な事項(財産法と家族法の基礎)を学習する。

科目名および講師(所属) 時間
(分)
科目の内容

財産法の基礎 (契約、後見人の権限)

大久保博史 (司法書士、司法書士法人つばさ総合事務所)

90 後見と関連が深く、後見業務を行う上で必要となる財産法の基本的な事柄(契約および後見人の権限(代理・同意・取消・追認権)に関する概要)について理解する。

家族法の基礎(後見事務と相続)

片岡武 (弁護士、元裁判官、地域後見推進センター 執行理事)

90 後見人として業務を行う上で必要となる家族法の基本的な事柄(法定相続、遺言、遺産分割の概要や実施方法、およびそれらを行う際の留意点など)について学ぶ。

 

9. 後見関連機関の役割と実務

後見制度と関係が深い各種機関(市町村、家庭裁判所)の役割と実務の態様について学習する。

科目名および講師(所属) 時間
(分)
科目の内容

後見関連機関の役割と実務 Ⅰ (家庭裁判所)

寺田さや子(裁判官)

90

家庭裁判所における後見担当部の役割や成年後見事件に関する審判や審理等に係る手続きや運用などの実務のあり様について具体的に学ぶ。

後見関連機関の役割と実務 Ⅱ (市町村の取り組み)

東啓二 (東大教育学研究科 特任専門職員)

60 後見人の活動のサポートや成年後見制度利用の支援・促進などの事業、後見実施機関の設立とその支援などに関する市町村の取組みや施策の実施状況などについて学習する。

 

10. 後見実務の演習と討論

後見実務の演習に関する解説を行うとともに、後見活動のあり方などについて具体的な検討・討論を行う。

科目名および講師(所属) 時間
(分)
科目の内容

後見実務の演習 Ⅰ(後見申立演習の解説)

飯間敏弘 (東大教育学研究科 特任助教)

60 後見実務(後見等開始申立の書類作成等)に関する演習の実施に際し、後見に係る申立ての書類を作成するために必要となる事項の解説や説明を行う。

後見実務の演習 Ⅱ(事例の検討)

飯間敏弘 (東大教育学研究科 特任助教)

60

後見事例に関する受講生同士の討論(グループワーク)を通じて、各々が異なる意見を交換する中で、自己の価値観を相対化し、後見人として適切に対処できるような考え方等を身につける。

 

11. 総括的講義

講座における総括的な講義として、成年後見の今後の課題と展望について検討し、最後にそれまでの講義の理解度を確認するためのテストを実施する。

科目名および講師(所属) 時間
(分)
科目の内容

成年後見の課題と展望(成年後見制度の利用促進等)

水島俊彦(法テラス 常勤弁護士、成年後見制度専門家会議 委員)

90 近年制定された成年後見制度利用促進法および基本計画について、その内容や実施状況について学習し、今後、後見制度の普及と利用を促進するための方策について検討する。

理解度確認テスト

飯間敏弘 (東大教育学研究科 特任助教)

60 各講義についての理解度を確認し、受講生に自身の到達度を自覚してもらい、また修了後のさらなる学習の動機付けを高めるため、講座の最後に理解度確認テストを実施する。

 

 

Ⅱ. 実習(15時間)

体験実習として、後見実務演習や選択課題などの実践的な課題に取り組み、後見人として活動するための知識と経験を身につける。

科目名および講師(所属) 時間
(分)
科目の内容

1.後見実務演習(後見開始申立書等の作成)

飯間敏弘 (東大教育学研究科 特任助教)

600 具体的な設例に基づき、後見等開始申立書、申立事情説明書、支援計画書など、後見等開始申立等に係る書類を実際に一通り作成することを通じて、後見業務に関する実践的な知識や技術を身につける。

2.選択課題

飯間敏弘(東大教育学研究科 特任助教)

300

以下の5つから課題を任意に選択して実施する。

①成年後見制度の普及・啓発活動に関する企画
成年後見制度をさらに人々に普及・啓発していくために、地域や職場などで、受講生が主体となって、開催する説明会やイベントなどについて具体的に企画する。

②成年後見に関係する業務上・生活上の課題に関する検討
自分が仕事や生活を行ううえで課題(成年後見に関係する問題)となっている事柄につき、どのように対応すべきか、またどのような改善策があるかといった点について具体的に検討する。

③任意後見契約書の作成
自分または自分の身近な人(家族や知人等)を委任者とする任意後見契約書(できれば移行型)を作成する。

④エンディングノートと遺言書の作成
自分のエンディングノートと遺言書を作成する。

⑤自己設定課題
自分で課題の内容を任意に決めたうえで実施する。

※「⑤自己設定課題」の課題の内容は、以下の2つの要件を満たす必要がある。
①課題の内容が、広い意味で成年後見に関連している(例えば、「高齢者や精神・知的障がい者等への支援」「自分や親族の将来への備え」など)
②課題実施の所要時間が最低でも5時間程度

※特定の課題(①②⑤の課題)については、複数の受講生がチームになって1つの課題に取り組んでもらってもよい。

※「選択課題」はいずれも家庭学習の形で実施。想定される実施時間はいずれも5時間程度。

※「選択課題」における5つの課題のうち、どの課題を行うかは、講座開講後に決めてよい。