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後見等開始審判における鑑定省略の常態化への警鐘
報道[1]日本経済新聞(2017年11月8日)によると、「名古屋高裁が、成年後見制度の適用を決めた津家裁四日市支部の審判を取り消し、審理を差し戻す決定を出していた」とのことです。
名古屋高裁は、津家裁による後見開始の審判は「鑑定を経ておらず手続きが違法」としています。高裁が家裁の後見開始審判を取り消すのは極めて異例といえます。
そもそも家事事件手続法(第119条第1項)においては、「家庭裁判所は、成年被後見人となるべき者の精神の状況につき鑑定をしなければ、後見開始の審判をすることができない。ただし、明らかにその必要がないと認めるときは、この限りでない」とされています。
つまり法律上、後見開始の審判を行うためには原則として本人の精神鑑定が必要とされています。しかし近年では、審理期間の短縮化の要請等を背景に、鑑定を省略して医師の診断書だけで後見開始の審判が行われることが多くなっています。
現在、後見等開始審判における鑑定実施率は9.2%にまで低下しており[2]最高裁判所「成年後見関係事件の概況(平成28年)」、鑑定の実施がむしろ例外となっています。
本人の精神状態に対する誤った診断に基づき、妥当でない審判がなされた場合、本人の重大な権利侵害につながってしまう恐れがあります。
本事例は、近年の鑑定省略の常態化に対する一つの警鐘といえるのかもしれません。
詳細については、以下のリンク先の記事をご参照ください。
精神鑑定せず後見は違法 名古屋高裁、家裁審判覆す