4-2.後見人の費用と報酬
成年後見人等(成年後見人、保佐人、補助人)が選任され、仕事を行うと、通常、事務を行うための経費と報酬が発生します。
また、後見監督人等(成年後見監督人、保佐監督人、補助監督人)が選任された場合も、同様に経費と報酬が発生します。
これらの費用は、通常、本人(成年被後見人、被保佐人、被補助人)が負担することになります。
本章では、成年後見人等および後見監督人等の費用と報酬について説明します。
1. 後見人の費用と報酬
(1) 後見人の事務の費用
成年後見人等は、後見の事務を行うために必要な費用(交通費や通信費などの実費)は、直接、本人の財産から支出することができます。
また成年後見人等が立て替えた費用を、本人に求償することもできます。
(2) 後見人の報酬
家庭裁判所は、成年後見人等および本人の資力その他の事情により、相当な報酬を成年後見人等に与えることができます。
報酬は、本人の財産の中から支出されます。
通常、成年後見人等は、定期的に(通常1年おきに)家庭裁判所に対して後見事務の報告を行い、それと同時に報酬付与の申立ても行います。(報酬が不要の場合は、報酬付与の申立てを行いません。)
その申立てを受けて家庭裁判所は、成年後見人等の仕事ぶりや本人の財産(主に金融資産)の状況などを考慮に入れたうえで、報酬付与の審判を行います。
一般的な相場感として、専門職後見人の場合、1ヶ月の報酬額のベースは2万円程度であり、仕事ぶりに応じて、それに付加報酬が追加されることになります。
(3) 後見人の報酬額の目安
成年後見人等の報酬額の目安(専門職後見人の場合)としては、次の表の通りです。
通常、成年後見人等には、ベースとなる報酬として「基本報酬」が付与されます。特別の事情があったり、特別な行為が行われた場合、それに「付加報酬」が加えられます。
下表は、専門職後見人の報酬の目安であり、親族後見人や市民後見人の場合は、これよりも報酬額が低くなる傾向にあります。
事務内容 | 条件 | 報酬額 (月額) |
|
基本報酬 | 通常の後見事務を行った場合 | 管理財産額(本人の金融資産) | |
1千万円以下 | 2万円 | ||
1~5千万円 | 3~4万円 | ||
5千万円より上 | 5~6万円 | ||
付加報酬 | 身上保護等に特別困難な事情があった場合 | 特別困難な事情の例:
|
基本報酬額の50%の範囲内で相当額の報酬を付加 |
特別な行為をして、被後見人の財産を増加させた場合 | 経済的利益額に応じて相当額の報酬を付加(事案の内容に応じて、30%の範囲内で増減することがある) | ||
特別な行為の例: | |||
(1)訴訟 本人が不法行為による被害を受けたことを原因として、加害者に対する1千万円の損害賠償請求訴訟を提起し、勝訴判決を得て、管理財産額を1千万円増額させた場合 |
約80~150万円を付加 | ||
(2)遺産分割調停 本人の配偶者が死亡したことによる遺産分割の調停を申し立て、相手方の子らとの間で調停が成立したことにより、総額約4千万円の遺産のうち約2千万円相当の遺産を取得させた場合 |
約55~100万円を付加 | ||
(3)居住用不動産の任意売却 本人の療養看護費用を捻出する目的で、その居住用不動産を、家庭裁判所の許可を得て3千万円で任意売却した場合 |
約40~70万円 を付加 |
*表は、「成年後見人等の報酬額のめやす」(東京、横浜、大阪、奈良家裁)に基づき作成。
2. 後見監督人の費用と報酬
(1) 後見監督人の事務の費用
成年後見人等と同じく、後見監督人等も、その監督事務にかかる費用を、本人の財産から支出することができます。
また、後見監督人等が費用を立て替えた場合、本人に求償することができます。
(2) 後見監督人の報酬
成年後見人等と同じく、後見監督人等も、その仕事ぶりに応じて、家庭裁判所の審判により報酬の付与を受けることができます。
通常、後見監督人等は、定期的に(普通は1年おきに)家庭裁判所に対して監督事務の報告を行い、それと同時に報酬付与の申立ても行います。
報酬は、本人の財産の中から支出されます。
一般的な相場感として、後見監督人等の1ヶ月の報酬額のベースは1万円程度であり、特別な事務等が行われた場合、それに付加報酬が追加されることになります。
(3) 後見監督人の報酬額の目安
後見監督人等の報酬額の目安としては次の表の通りです。
事務内容 | 条件 | 報酬額 (月額) |
|
基本報酬 | 通常の監督事務を行った場合 | 管理財産額(本人の金融資産) | |
5千万円以下 | 1~2万円 | ||
5千万円より上 | 2.5~3万円 |
*表は「成年後見人等の報酬額のめやす」(東京、横浜、大阪、奈良家裁)に基づき作成。