2-2.成年後見の対象者
1. 成年後見制度の対象者
成年後見制度の対象となるのは、「①精神上の障がい」により、「②事理を弁識する能力が低下している」人です。
旧制度の準禁治産制度においては、浪費者も対象とされていましたが、現行の成年後見制度では除外されています。
なお、未成年者であっても、①と②の要件を満たしていれば、成年後見制度を利用できます。
「精神上の障がい」とは、認知症、知的障がい、精神障がい、高次脳機能障がいなどが想定されています。
仮に本人に寝たきりなどの身体障がいがあっても、「精神上の障がい」がなく、「事理を弁識する能力」を有している場合には、後見制度を利用することはできません。
また、ここでいう「事理を弁識する能力」(事理弁識能力)とは、自己の行為の結果について認識し、判断する精神的能力のことをいいます。
2. 法定後見の3類型(後見・保佐・補助)
法定後見においては、事理弁識能力の減退の程度により、3つの類型のうちのいずれかが本人に適用されることになります。
具体的には、
①「事理を弁識する能力を欠く常況にある者」は「後見」、
②「事理を弁識する能力が著しく不十分である者」は「保佐」、
③「事理を弁識する能力が不十分である者」は「補助」
が適用されます。
そして後見の適用者は「成年被後見人」、保佐の適用者は「被保佐人」、補助の適用者は「被補助人」と呼びます。これらの人を総称して、「本人」と呼ぶこともあります。
「成年被後見人」、「被保佐人」、「被補助人」を保護する人を、それぞれ「成年後見人」、「保佐人」、「補助人」と呼びます。(以下、これらの人を総称して「成年後見人等」と呼びます。)
3. 法定後見の対象者の状態像
法定後見における3類型の対象者の状態像としては、以下の表のようになります。
後見 | 保佐 | 補助 | |
保護する人 | 成年後見人 | 保佐人 | 補助人 |
本人 | 成年被後見人 | 被保佐人 | 被補助人 |
本人の |
事理を弁識する能力を欠く常況 | 事理を弁識する能力が著しく不十分な状態 | 事理を弁識する能力が不十分な状態 |
具体的な |
自己の財産を管理・処分できない状態。 |
自己の財産を管理・処分するには、常に援助が必要な状態。 |
自己の財産を管理・処分するには援助が必要な場合がある状態。 |
4. 法定後見における資格制限(欠格条項)の撤廃
かつて、法定後見制度のうち後見または保佐類型が適用されると、法律上、様々な資格や職種等の制限(欠格条項)が課せられていました。
例えば、成年被後見人および被保佐人は、国家公務員、地方公務員、医師、歯科医師、獣医師、薬剤師、一級・二級建築士、弁護士、司法書士、行政書士、税理士、公認会計士、弁理士、社会福祉士、介護福祉士、社会保険労務士、精神保健福祉士、校長または教員、株式会社の取締役、一般社団法人等の役員などになることはできませんでした。
さらにこれ以外にも、およそ200にのぼる資格や職種等の制限がありました。
ですが、2019年6月にいわゆる欠格条項削除法等が成立することで、これらの制限は原則としてすべて撤廃されることになりました。[1]なお、かつて成年被後見人は選挙権が制限されていましたが、2013年の公職選挙法等の改正により権利が回復されました。
他方、任意後見は、制度発足当初から上記のような資格制限は一切ありませんでした。
脚注
↑1 | なお、かつて成年被後見人は選挙権が制限されていましたが、2013年の公職選挙法等の改正により権利が回復されました。 |
---|