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地域後見推進プロジェクト

共同研究
東京大学教育学研究科生涯学習論研究室+地域後見推進センター

講師への質問と回答

目次:

1. 成年後見制度概論: 飯間敏弘
2. 市民後見概論: 品川成年後見センター
3. 任意後見制度: 阿部正幸
4. 財産管理の実務(不動産の管理):全国住宅産業協会
99. 講座全般(講義の内容以外)に関する質問

 

※講師のご都合等の事情により、いただいたご質問にご回答できない場合(または事務局が講師に代わってご回答する場合)がございますので、ご了承ください。
※回答は各講師の個人としての見解であり、各講師が所属する組織等の見解ではございませんので、その旨ご了承ください。
 

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1. 成年後見制度概論
   飯間敏弘(東大助教)

質問1

質問 回答

 レジュメ集1P52(スライド34)後見等申立権者
「①本人が成年被後見人、〜いずれかである場合:
+成年後見人、〜監督人」
の記載について、後見等開始審判の申立権者となるのは、成年後見人“候補者”ということでしょうか?
 P51(スライド31)において、成年後見人等が専任されるのは、審判の際だと思います。
 審判前の申立時に成年後見人等が決まっている場合(後見人等の選任の審判をしないケース)もあるのでしょうか?

 本人について既に法定後見が開始されていて、本人が被後見人等(成年被後見人、未成年被後見人、被保佐人、被補助人)である場合、本人についている後見人等(成年後見人、未成年後見人、保佐人、補助人)および後見監督人等(成年後見監督人、未成年後見監督人、保佐監督人、補助監督人)は、後見等(後見、保佐、補助)の開始審判の申し立てを行うことができます(民法第7条、第11条、第15条)。
 これらの申立権者は、主に本人に適用されている後見の類型を変更するとき(例えば補助から保佐や後見に変更するとき)に、後見等開始審判の申立てを行うことになります。
 例えば、本人について補助開始の審判がなされて、相当期間が経過した後、被補助人である本人の認知症が悪化して後見相当になってしまい、後見開始の審判を申し立てる必要が生じた場合、そのとき本人についている補助人は(補助監督人がいる場合は補助監督人も)、後見開始の審判を申し立てることができます。

 上記を踏まえてご質問に回答すると下記のようになります。

Q1:後見等開始審判の申立権者となるのは、成年後見人“候補者”ということでしょうか?

A1:成年後見人等候補者は後見等開始審判の申立権者ではありません。

Q2:審判前の申立時に成年後見人等が決まっている場合(後見人等の選任の審判をしないケース)もあるのでしょうか?

A2:後見等開始の審判が行われるときは、それと同時に後見人等の選任の審判も行われます。したがって、後見等開始の審判だけを行って、後見人等の選任の審判は行わないということはありません。(別言すると、法定後見を利用していない本人について後見等開始審判の申立てをした場合、後見等開始審判がなされる前に後見人等選任の審判が行われるということはありません。)

 

2. 市民後見概論(市民後見人の活動と支援)
 品川成年後見センター

質問1

質問 回答

質問1:
 法定・任意後見ともに、申立てがない限り、後見手続きは開始されませんが、高齢になって、独居で家族がいない場合、法定後見の申立てが必要な人は、実際の現場では、どのように発見されるのでしょうか?(近所の方の通報?ケアマネージャーからの申し出?等)
※市町村長が申立人となってしまう場合になるかと思います。

質問2:
 任意後見契約を締結していて、申立権者が「任意後見受任者」しかいない場合(独居・家族がいない等)、申立てをするタイミングというのは、どのように分かるのでしょうか?
 (任意後見開始前は、任意後見受任者が1か月に1回は電話で安否確認するなど、
本人とどのようなコンタクトをとるのが一般的なのでしょうか?)

 回答は下記のPDFをご覧ください。

 品川成年後見センターによる資料

 

3. 任意後見制度
 阿部正幸(公証人)

質問1

質問 回答

 1点質問なのですが、任意後見契約締結にあたり、公証人にて判断能力に疑義があるとご判断された場合、どのような流れとなるのでしょうか?
 公証人にて直接、医療受診や診断書の取得等を直接ご本人に求めることはありますでしょうか?

 任意後見契約を締結するには、本人にその契約を締結するだけの判断能力が必要となります。本人にこのような判断能力がないのに締結された任意後見契約は無効となります。公証人は、一般に無効な法律行為については公正証書を作成してはならないとされており(公証人法26条)、当事者の行為能力に疑いがあるときは、関係人に注意を促し、かつその者に必要な説明をさせなければならない義務を負っています(公証人規則13条)。

 このため、任意後見契約の締結に当たり、本人の判断能力(事理弁識能力)に疑義があるときは、公証人は本人が契約の成立及び効果を理解するに足りる能力を有することを証する診断書等の提出を求めるべきであるとされています(法務省民事局長通達)。

 診断書の提出等を求める相手方は、判断能力に疑義のある本人ではなく、本人の親族(多くは任意後見受任者となる予定の者)や契約の締結について当事者が相談をしている専門家(弁護士や司法書士等)となることが多いと思います。

 提出された診断書等から本人に契約締結の判断能力がないと判断される場合には、任意後見契約の締結をお断りすることになります。

 

4. 財産管理の実務(不動産の管理)
 松﨑隆司、西澤希和子(全国住宅産業協会)

質問1

質問 回答

財産管理の実務(不動産)の講義資料についてとなります。
講義の時間に割愛されました、Q1-Q8についてですが回答文書をお示しいただけるとありがたいです。

Q1.不動産事業者に委託する場合、その様な業者を選ぶと良いか?

 不動産事業者の得意分野があり、売買と賃貸では行う業務や内容が異なります。
 やってやれない事はありませんが、やはり得意とする業者へお願いする事が良いと考えます。
 但し、不動産事業者も質も違い選ぶのは難しいと思いますので、東京大学を通して全住協に依頼して頂ければ内容に沿える事業者を提案致します。

 

Q2.不動産の売買について、司法書士に委託すべきなのか?不動産事業者に委託すべきなのか?

 司法書士  → 不動産登記のプロ
 不動産業者 → 不動産の売買及び賃貸のプロ

(追記)
Q1と同様で、司法書士は不動産の売買・賃貸が主業務ではなく、得意ではないケースも多い。

 

Q3.分譲マンションを売却する場合、特に注意する点は何か?

 管理費や修繕積立金の未払いが無いかの確認と近隣(左右上下等)とのトラブルや、大規模修繕に伴う追加金などが無いか、長期修繕の計画や今までの修繕記録等の確認が必要となります。
 売却する際の重要事項説明に記載する必要がある為に詳細を把握しておくことが必要です。

 

Q4.分譲マンションを貸す場合、特に注意する点は何か?

 賃貸する際に、管理組合にて規制がある場合がある(特に「民泊」が騒がれだした後、既存住民の住環境を守るために規制強化した共同住宅も多い)ので事前に規約等を取り寄せ確認が必要です。
 入居前に設備の点検をして、壊れている場合は修理を行い、汚損箇所がある場合は、退去時の条件等を決めておくなど、賃貸借契約時に重要事項説明にて記載が必要となりますが、賃貸を募集する不動産業者との細かいやり取りをしておいた方が良いでしょう。

 

Q5.敷地が借地の場合、どうすれば良いのか?

 借地権や地上権等の複雑な権利物件の場合は、一般的な不動産事業者はあまり詳しくない事が多いため、借地専門業者へ問い合わせる事をお勧めします。

(追記)
(あくまで個人的見解ながら…)借地は特殊で、対応がケースバイケースとなることが多く、不動産事業者で売買・賃貸が主業務の担当者では、対応未経験者の方が多いかと思われます。

 

Q6.不動産を売買する場合、「重要事項説明(重説)」に関して特に注意する点は何か?

 不動産売買を行う際は、売主や仲介業者は物件についての重要な情報を開示しなかったり、説明しなかったりした場合は、説明義務違反となり損害賠償請求が認められる場合があります。
 些細な事でも売却を依頼した不動産事業者へ物件に関する事を話したり、書類を用意して説明する事で「重要事項説明書」を作成する事が出来ます。

(例)
以前、クリーニング業(写真現像、ガソリンスタンド等)などの特殊な薬品を使用していた場所であった(土壌汚染が疑われる)
歴史的文化財が地下にある可能性もある(奈良や京都など)
以前の死亡事故や事件など
私道・各種協定等について事前に取り決められている、事前に説明を受けている情報
許可を取らずに立てた増築部分
 …などの様々な事に関して

 

Q7.空き家等を管理する場合、実際にどのような事をすれば良いか?

 こちらについては講義内で説明済

(追記)
主に当該建物関連(建物保全、防犯、通気・通風、設備保全、郵便物処理、草木繁茂等)
及び隣地・近隣対応関連(境界、境界壁、隣地への越境、木枝葉、雨水、排気、ゴミ等)

 

Q8.障がい者や認知症高齢者が、賃貸住宅・アパートを借りようとする場合、特に注意すべき点は何か?

 賃貸する際の契約行為に対して、後見人が必要となるかの確認。
 家賃債務保証を利用する際に告知を行う必要があるが、審査に承認が出ない場合が多い。
 賃貸する事が難しい事が多いために、地域の居住支援法人や各都道府県や市町村にある相談窓口へ依頼して、居住支援法人を紹介してもらう事で借り入れる事が出来る場合が多い。
 入居中の生活支援はとても大切となる為に、そのネットワークを構築する事も必要となる。

 

99. 講座全般(講義の内容以外)に関する質問

質問1

質問 回答

質問1:
 成年後見人には医療行為の同意権は無いが、代理権で医療契約を結ぶことはできる。
 本人に判断能力が無い場合は、医療チーム等と相談しながら最良の判断をし、成年後見人が同意書に代筆することがある。
→で正しいですか?また、それを代諾と捉えることは正しいですか?

質問2:
 「登記されていないことの証明書」を取れる人は
 ①本人
 ②本人の4親等以内の親族(戸籍で証明)
 ③後見人等(委任状が必要)
 で正しいですか?

質問3:
 本人の4親等以内の親族を戸籍で証明するのに必要なのは、戸籍謄本ですか?戸籍抄本ですか?申請する時にレ点が必要な項目はありますか?

質問4:
 登記されていないことの証明書を取るときの委任状の件です。
 委任者が署名捺印ができず、後見人等が代筆する場合、「代筆の記録」と取っておくと良いとのことでしたが、この「代筆の記録」とは、内容的にはどのようなことを記録しておけば良いですか?

質問1:
 成年後見人は本人の医療行為に関する同意権は有していませんが、代理権を用いて医療契約を結ぶことはできます。
 「本人に判断能力が無い場合は、医療チーム等と相談しながら最良の判断をし、成年後見人が同意書に代筆することがある。」の文章については、「代筆」の法的意味に留意が必要です。本人は医療を受けることに同意していて、単に本人が署名することが困難な場合に成年後見人が代筆を行うことは可能ですが、そうでない場合に、成年後見人が本人の法定代理人として本人の医療同意を代理して行うことは不適当といえます。
 実務では、後見人等として同意書にサインすることはできないが、別の趣旨の文書(例えば、「後見人等として担当医の説明を受けた」といった趣旨の内容の文書)にサインすることで対応しているという後見人等もいるようです。

 この点については、「身寄りがない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関するガイドライン」が参考になるのでご覧ください。特に下記の記述は参考になるように思われます。

同ガイドライン24ページ:
 医療に関する意思決定においては、病院の医療職だけでなく、成年後見人等やケアマネジャー、ホームヘルパーなど患者に係わる人が繰り返し最善の方法に関して話合いを行うことが必要となります。

同ガイドライン27ページ:
※医療機関としての留意点
 現行制度では、成年後見人等の役割としていわゆる医療同意権までは含まれないことについて十分留意し、成年後見人等に同意書へのサインを強要することがないよう注意して下さい。医療機関が成年後見人等に対して説明を行った旨を、医療機関と成年後見人等の間で事実確認として残したい場合には、例えば「成年後見人として担当医の説明を受けました」等の記載とすることで対応するという方法もあります。

質問2:
 「登記されていないことの証明書」を取得できる人は、主に下記の人です。
①本人
②本人の4親等内の親族
③上記の者からの委任等により、当該行為(当該証明書の取得)に関する代理権を授権された者

 なお、成年後見人は本人の法定代理人として当該証明書を取得可能です。
 また、保佐人および補助人は、(代理権付与の審判がなされることにより)当該行為について法定代理権を有している場合、または上記①②の人から当該行為について委任されている場合、当該証明書を取得可能です。

質問3:
 本人の4親等以内の親族であることを戸籍で証明する場合に必要となるのは、本人との関係を証する戸籍謄本または戸籍抄本です。
 その際、「登記されていないことの証明書」における「証明を受ける方との関係」の欄の中の「配偶者」または「4親等内の親族」のいずれかにレ点を記入します。

質問4:
 委任者が自書することができず、後見人等が代筆する場合、当該委任者が委任をする際の意思表示の内容を記録として残しておくのが望ましいといえます。例えば、委任者が後見人等に委任する際にどのような発言をしていたか、その発言内容を具体的に記録(録音・録画等)しておくとよいと思われます。

 

 

 

 

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